『音色のお茶会』
「相乗効果」
土浦とは何もかもが正反対で、ことあるごとに諍いを起こし、アンサンブルを組めば必ずと言っていいほど完成に時間を有することとなった。『でも、妥協しないから絶対にいい演奏に仕上がるの、2人が一緒のアンサンブルって』
俺と土浦の言い合いでアンサンブル練習が滞ったとき、日野に苦笑い気味でそう言われた。
『2人に感化されるのか他のみんなもいっぱい意見を出してくれるし、演奏し終わった後の満足感がすごいんだよね』
苦笑いを笑顔に変えて言われたときは驚いた。
確かに、土浦がアンサンブルメンバーにいると思いがけない演奏の仕上がりになることが多い。それが自分の思う演奏ではなくても、嫌だと思うわけではなく、むしろ最終的には充実した気分で演奏することが出来た。
違うからこそ、なのだろうか。
反発を繰り返しながら、言い合いを繰り返しながら、ひとつの曲を仕上げていく。一緒に演奏するメンバーの意見の、その全部が混ざり合って、そのメンバーだからこその音色が出来上がっていく。
最初から同じ意見なら、もめることもなくすんなりと演奏できるのだろう。だが、そうじゃないからこそ、正反対だからこそ一生懸命になる。それは、すごいことなのではないだろうか。
『相乗効果だよね、二人の演奏が混ざると』
日野の言葉に、そういう考え方もあるのかと驚かされた。
違うことは悪いことじゃない。みんな同じだったら、同じ音楽しか生まれない。
楽譜に書かれた旋律を正確に弾くことを正しいことなのだと思っていた俺と、楽譜に書かれたこと以上に感情的で、ともすると書かれていない過剰な弾き方をする土浦と、まったく違うからこそ、交わらなさそうだからこそ、それがひとつになったときには思いもよらない音色となって、曲が仕上がるのだろう。
土浦のような弾き方は俺には真似できないし、真似しようとも思わない。だが、初めて聴いたころのようにただ否定するだけではなく、それもまた演奏技術なのだと考えれば、俺は新しい音楽を手にすることが出来る。
これからも、そんな音楽を作り上げていきたいと思った。そんな風に思ったのは初めてだと思う。それは、少なからず土浦の演奏に惹かれ始めているからなのかもしれない。
俺の演奏も、土浦の中に何かをもたらしていればいいと、俺はそんな風に思った。
2016.3
拍手第23弾その3。
正反対の二人だからこそ
これも毎度おなじみのありがち設定ですね。
まだ恋愛には全然なっていなそうです。
拍手第23弾その3。
正反対の二人だからこそ
これも毎度おなじみのありがち設定ですね。
まだ恋愛には全然なっていなそうです。