TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「融通が利かない」

「ここで君はいつも走り過ぎる。もう少し一音を大事に弾いてくれ」
「ん、わかった。そういえばここだけどさ、流して弾くより一回切ったほうがメリハリがついていいんじゃないか?」
「そうだな。それで一度弾いてみよう」
 出会ってから一年半、一緒に弾く度にケンカに近い言い合いを繰り返してきた俺たちも、お互いの意見を聞くようになった。
 もちろん、いつでも同じ考えではないし、むしろ違う意見のほうが多いし、納得出来ないこともあるが、感情的に全面否定するような態度はとらなくなった。
 そしてお互いを理解したい、もっと知りたいと思う気持ちが好きに変わり、紆余曲折を経て付き合い始めてからもうすぐ一年になろうとしている。
「合わせる前にちょっと休憩しないか」
「まだ始めてから一時間も経っていないだろう」
「そうだけど…今日は休憩にしようぜ」
「何故だ。休憩時間さえ惜しんで練習することもあるのに」
「なんでって…いいだろう、たまには」
「理由もなくこんな早くに休憩するのは気が進まない」
「ったく、融通が利かないな。いいだろう、理由なんてどうでも」
「どうでもいいわけはないだろう。君と一緒に練習出来る時間は限られているんだ」
「あー、もう、座ってるのが辛いんだよ」
「何故だ」
「お前のせいだろう。察しろよ」
「あぁ、昨夜は無理をさせただろうか。すまない」
「謝る前に気を利かせてくれ」
「そうだな、では休憩にしよう。だが立っているのも疲れるだろう」
「って、何を…」
「俺に寄り掛かってくれて構わないから」
「お前、学院でくっつくなって言っただろう」
「大丈夫だ。ここはドアからも窓からも死角になるから誰にも見られない」
「だからって、やっぱりダメだって…」
「君も相変わらず融通が利かないな。辛いときくらい素直になってくれ」
「そういう問題じゃないだろう。っていうか誰のせいだよ」
 音楽については譲り合えるようになったが、それ以外のことはまだまだまだ譲歩出来ていないなと思った、ある日の放課後。



2014.9
拍手第21弾その5。
付き合い始めて一年後

1年後だけど学院って…留学しなかったのかしらと
後になって気付きました(大失敗)
そして1年後でも相変わらずというかなんというか(苦笑)
あ。会話ばかりの書き方なので、蓮梁ってことにすれば
1年後=2年生ってことで辻褄が合うかも(笑)