『音色のお茶会』
「帰れない土曜日」
土曜日の午後、月森と待ち合わせをして二人で出掛けた。駅前の楽器店で楽譜を見てからコンサートを聴きに行き、感想を言い合いながら夕飯を食べ、誘われて月森の家へとやって来た。
聴いてきたばかりの曲をなぞるように二人で合わせ、高揚した気分で月森を見つめれば、月森も同じように俺のことを見ていた。
不意に二人の距離が近くなって、月森の手が俺へと伸ばされる。
触れてくる手の温度は俺よりも少し低いはずなのに今日はやけに熱く感じて、それだけで俺の体温も上がったような気がした。
こんな風に触れられて、それがどういう意味を持つのかわからない俺ではなく、逆にわかるからどうしようもなく恥ずかしくて思わず俯いてしまった。
いつになっても慣れることのないこの雰囲気と、たぶんそれさえもわかっていて仕掛けてくる月森の態度に色々な意味で顔が赤くなっていくのを自覚する。
その顔を隠したくて更に俯けば、それを許してはくれない月森の手が頬へと触れ、そのまま顔を上げさせられてしまった。
口から出るのはちょっととか待てとかそんな言葉だったが、目の前で嬉しそうな顔を見せられ、強引ではないくせに振り解けない力で引き寄せられてしまえば、俺はもう月森以外の何も考えることが出来なくなってしまった。
2012.6
拍手第14段その6。
Saturday which cannot return
今日はもう、帰れそうにない
次の日が休みだとわかっているデートは
帰れるわけないよね~とか考えてしまうけれど
二人はまだ高校生なのにそれってありなんでしょうか…。
拍手第14段その6。
Saturday which cannot return
今日はもう、帰れそうにない
次の日が休みだとわかっているデートは
帰れるわけないよね~とか考えてしまうけれど
二人はまだ高校生なのにそれってありなんでしょうか…。