TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「quality time」

 週に一度、夜の8時から9時の間。
 ウィーン時間で、お昼の12時から1時の間。
 月森から、決まって電話が掛かってくる。

 携帯電話の画面に表示される名前に、自然と笑みが漏れる。
『土浦』
 耳元で名前を呼ばれ、俺は無意識に目を閉じる。

 長くても10分の、近況報告と他愛のない会話。
 それは月森がウィーンに留学してから、ずっと続いている。

 話したいことはたぶん、もっとたくさんある。 
『おやすみ』
 けれど月森は、少し早い挨拶で会話を締めくくる。

 お互い譲れない未来があるから、お互いを縛り止めることはしない。
「午後も頑張れよ」
 だから俺も、見えないとわかっていながらも笑顔でそう返す。

 週に一度でも、たった10分足らずでも。
 それは俺たちにとって、かけがえのない時間。



2011.3
拍手第12段その3。
quality time(かけがえのない時間)

日常の中にあるひとこま的な時間こそが大切なものなんだって、
離れているからこそ感じるのかな、と。