『音色のお茶会』
「promise to meet again」
「もう逢えないって訳じゃないだろう」土浦は少し考えた後に、笑顔でそう答えた。
俺がウィーンへの留学を決めたのは、夏休みが明けたばかり頃だったと思う。
留学するのならば短期などという中途半端なものではなく長期で行くつもりで、そうなると日本へ帰ってくるのはいつになるのか自分でもわからなかった。
土浦を好きだと自覚したのはそれよりもう少し後のことで、あと少ししか一緒にいられないのだと思えば気持ちを伝えずにはいられなかった。
告白はすんなり受け入れて貰えた訳ではなかったが、俺たちの関係は同級生から恋人へと昇格することが出来た。
けれど俺の留学はもう目の前まで迫っている。
留学することで更なる上を目指そうと思う気持ちに変わりはなかったが、心のどこかに離れたくないと思う気持ちが生まれることは止められなかった。
だからやっとの思いで留学の話を告げ、逢えなくなることを淋しいと思わず本音を漏らしてしまった俺にとって、土浦の言葉は驚きでもあり、ハッとさせるものでもあった。
すぐに逢えない距離だとしても、永遠に逢えない訳じゃない。
気持ちまでもが、離れてしまう訳でもない。
「必ず土浦に逢いに来ると約束する」
土浦の手をぎゅっと握り締め、俺はそう誓った。
2011.3
拍手第12段その2。
promise to meet again(再会を約束する)
ちょっぴり弱い月森君で書いてみましたが、
光を見出すとやっぱり強気になるのですよね。
拍手第12段その2。
promise to meet again(再会を約束する)
ちょっぴり弱い月森君で書いてみましたが、
光を見出すとやっぱり強気になるのですよね。