TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「much more easily」

 人を好きになるなんて、そんな簡単なことじゃない。
 ましてやそれが、犬猿の仲だと思っていた相手なら尚更。

 毎日の生活の中で切り離して考えることの出来ない音楽。
 その音楽を奏でていると思い浮かぶのは、自分とは正反対の音色。

 気に入らないと、そう思うことは簡単だった。
 好きになれないと、当たり前のようにそう思っていた。

 それなのに、心から離れてはくれないその音色。
 気になって仕方がない、その音色を奏でるその人。

 気の所為だと言い聞かせ、忘れるように努力した。
 好きになるよりも、嫌いになるほうが簡単だと思っていた。

 忘れようとすればするほど、募る想い。
 嫌いになどなりたくないのだと、あふれてくるのは心の声。

 気になり始めたら、もう嫌いになどなれなくなっていた。
 嫌いになるより、今以上に好きになるほうが簡単だった。

 想いを叶える事が一番難しいのだと、俺は初めて気が付いた。



2011.2
拍手第11段その6。
much more easily(ずっと容易に)

好きと嫌いを比べた話を書きましたが、
好きと音楽を比べても面白かったかな、とか思いました。
言葉の反対側を捉えた話になってしまったかもって気がします。