TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「look」*笹乃木様リクエスト&タイトル*

 好きだと気付いたら、相手にも振り向いてほしいと思うものだろう?

 春のコンクールで出会い、秋以降のコンサートで共演し、同級生という関係よりは少し近付いて、けれど親友と呼ぶには仲が悪過ぎて、それなのに気付いてしまったのは「好き」だと想うこの気持ち。
 ふと目が合った瞬間に「あぁ、俺は土浦を好きなのだな」と月森は思い、同時に「そうか、俺は月森を好きなんだ」と土浦は思った。
 けれどすぐに「でも俺のことは嫌いなんだろうな」という諦めに似た思いが続いてためいきが落ち、相手のためいきを見て「やっぱり」と誤解してしまう。

 相手を想う気持ちに気付いたところで「好き」だなんて言葉に出すことなど出来ず、だからといって簡単に諦められることでもないのだと思い知らされ、気付かれまいと思えば思うほど気持ちとは裏腹な言動をとってしまう。
 言い合う回数が増え、些細なことにまで難癖を付け「言い過ぎた」と後悔しては自己嫌悪に陥る。
 歩み寄りたくてもプライドが邪魔をし、例えそれを振り切れたとしても返される態度が怖いから二の足を踏み、逆に素直な態度をとられれば「どういうことなんだ」と困惑する。
 自分と同じ「好き」を返してほしくて、でもそんなことは端から「無理」だと思っていて、それでもやっぱり「好き」になってほしいのにそのやり方がわからない。

 気持ちを伝えられない代わりに相手を見つめ、視線を感じれば思わず振り向き、目が合った瞬間に「やっぱり好きだ」と想いを再確認する。
 それでもぎこちなく視線を逸らすことしか出来ず、意気地のない自分を叱咤してみるものの、目が合う回数が増えて視線を逸らすまでの間隔が長くなればどうしたって期待をしてしまうもので、心の中でこっそりと「もしかしたら俺のことを好きなのかも」という淡い期待を抱いては「そんなことはあるわけはない」と全否定して虚しくなる。
 ただ、その顔を見たいと思う気持ちは止められず、見つめながら「振り向け」と願い、視線を感じればそれが「土浦ならいい」「月森だといい」と思いながら振り返る。

 けれど「顔を見られればそれでいい」なんて嘘で、本当は「もっと近付きたい」と思っていて、あわよくば「俺を好きになってくれたらいいのに」なんて都合のいいことを考えている。
 見つめるその瞳にはいつだって「好きだ」と思う気持ちが隠されていたのだから、考えているだけではなく行動を起こせば、ほんの少しの勇気があれば、そしてあと少しだけ気持ちに余裕があれば、最初から同じ気持ちだったのだと気付くことが出来たかもしれない。

 振り向いて。俺を見て。俺を好きになって。
 そんな願いではなくて。
 好きだ。好きだ。好きなんだ。
 そんな本心を伝えなくては。

 人を好きになったら、まず気持ちを伝えないと何も始まらないだろう?



2011.2
拍手第11段その5。
look(見る)

リク内容は「すれ違い両想いで
お互いを見て振り向け!とか思ってるLR」でした。
この二人は恋愛に不器用そうなので、
相手の気持ちを察するなんて難しいことは出来なさそうですよね。
これって、傍から見たらバレバレなんでしょうかね?