TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「focus」

 気が付けば視界の中に月森がいる。目で追っているのか、自然と見付けるのか。
 まるで吸い寄せられるように視界の中心に収めると、心までもが引き寄せられて目が離せなくなる。

 俺の視線に気付けば、不機嫌を絵に描いたような表情が向けられる。
 じっと見つめていたつもりはなかったが、視線に気付かれるほどには見ていたらしい。

 答える言葉を見つけられずにいれば、怒るでも呆れるでもなく視線が逸らされる。
 それでも俺の視線は外れることなく、その姿が見えなくなるまで月森を中心に捉えている。

 視界の中に月森がいるだけで、何故か気持ちがほっとする。
 いつでも気が付けば視界の中にいて、その姿を探しているのだと自覚する。

 そして自然に目が合うことが多くなり、逸らされるばかりだった視線が俺を捉えるようになる。
 俺が自然と月森を見てしまうように、月森の視線も意識的に俺へと向かっているのなら嬉しい。

 いつかお互いが、お互いの焦点になればいいと思う。
 お互いをぶれることなくど真ん中に捉えることが出来たらいいと、俺は思った。



2011.1
拍手第10段その6。
focus(中心 焦点 関心の的)

別に対にしようと思ったわけではないのですが、
「eye」とちょっぴり似たような話になってしまいました。
不意に、というのも好きですが、じわじわした感じもいいです。