『音色のお茶会』
「清麗」*リクエスト&タイトル*
ひとつの練習室に、ふたつの曲が流れている。俺も土浦もそれぞれ別の曲を奏でているが、けれど別に練習の邪魔にはならない。
同じ曲を合わせて弾くなら話は別だが、自分の音に集中してしまえば人の音などあまり気にならない。
今日は納得出来る音を出せたと思い、少し休憩しようとヴァイオリンを下ろす。
そのままなんとなく土浦を見遣れば、俺とは対照的に浮かない顔でピアノを弾いていた。
理由は察しがつく。今、土浦が弾いている曲は土浦が苦手とする曲調のものだ。
どちらかといえば切ない曲調を好んで弾き、清らかな曲調はどうも苦手らしい。
何がどう違うのかと聞いたこともあるが、淡々と技術だけで弾くお前にはわからないと言われた。
それならば感情で弾く土浦は、清らかな曲をどんな感情で弾いているのだろうか。
切ない感情や明るい感情というものは想像出来るが、清らかな感情となると土浦に結びつかない。
そもそも、清らかな感情とはどういったものだろうか。
祈りや救い、木々や水などの空気感といった抽象的なイメージはあるが、それを感情で表現出来ない。
だから土浦はこういった曲調を苦手とするのだろうか。
情緒にあふれた土浦の音色は、清らかさや麗しさとは少し違うのかもしれない。
けれどどこか繊細さを感じさせる土浦の音色は、清らかな音色にも近いのだと俺は思う。
たぶん、土浦はそれに気付いていない。そして強い苦手意識が余計に音を硬くしてしまうのだろう。
そのことに気が付けば、きっと土浦の音色の幅は、今以上にもっと広がるだろう。
土浦が気付く手助けになればと、そう思って俺はヴァイオリンを構え直した。
俺はそれを技術でしか表現出来ないから、だから感情で弾く君とは違うかもしれない。
けれど、伝えたい気持ちが心にあるから、どうかそれに気付いて受け取って欲しい。
俺は祈りにも似た想いで、土浦が弾くピアノにヴァイオリンを重ね合わせた。
練習室に、二人の音色が響く。
それは清らかな水のような、風のような、そんな音色だった。
2010.2
拍手第7段その3。
二人でならば、どんな音色も奏でられる。
バッサリ切り捨てる月森君のイメージもあったのですが
ちょっと違う方向から攻めてみました。
リク内容は「清麗系が苦手な土浦について考える月森またはLR」でした。
拍手第7段その3。
二人でならば、どんな音色も奏でられる。
バッサリ切り捨てる月森君のイメージもあったのですが
ちょっと違う方向から攻めてみました。
リク内容は「清麗系が苦手な土浦について考える月森またはLR」でした。