『音色のお茶会』
「二人で歩く道」
「梁太郎」呼ばれた声に振り返れば、少し離れたところに探していたその姿を見つけた。
俺は荷物を持ち直し、小走りでそちらへと向かう。
「蓮。悪い、ちょっと手続きに時間掛かった」
慣れないドイツ語やその手続きに疲れはてていたその気分が、その姿と声であっと言う間に吹き飛んでいく。
「なかなか来ないから心配したが…とにかく無事に着いてよかった」
安心したような笑顔を見せられ、少し緊張していた俺もほっと息をついた。
「昼に日本を発って半日近く飛行機に乗ってたっていうのに、着いたらまだ夕方っていうのはやっぱ変な気分だな」
この時差は何度か経験したが、いつになっても慣れない。
「一晩寝れば、明日にはもうここの時間に慣れているさ。だが今は疲れているだろう。とりあえず、家に向かおう」
今日から、日本とは少しずれたこの時間が俺の時間になる。
ずっと8時間ずれていた俺たちの時間も、これからは同じ時を刻む毎日になる。
「新しい時間が動き出すんだな」
ほんの少し前を歩く後ろ姿を見つめ、俺は小さくつぶやいた。
「二人で共に歩く時間がな」
早く来いと言わんばかりに、軽く触れた指が絡んで俺を引っ張る。
「そうだな…」
俺は大きく一歩踏み出し、その隣を並んで歩いた。
2010.1
拍手第6段その6。
これから、二人で歩む日々が始まる。
普通に仲良しさんな関係になったら、
いつかはウィーンで同居…なんてこともあるのかしら?
拍手第6段その6。
これから、二人で歩む日々が始まる。
普通に仲良しさんな関係になったら、
いつかはウィーンで同居…なんてこともあるのかしら?