『音色のお茶会』
「素晴らしき人生」
人生は何が起こるかわからないから面白いのだと、いつだったかそう言われたことを思い出す。それがいつで誰に言われたかなど覚えていなかったが、そのときの俺はその言葉の意味を考えることすらしなかった。
もしかしたら、俺の人生に面白いことなど起こらないと、そんな風に思っていたのかもしれない。
そんな俺にその言葉を思い出させたのは土浦だった。
春に出会い、数えきれないほどの言い合いをした。
その言動が理解出来ず、けれどなぜか無視することも嫌いになることも出来ない存在など初めてで、たいして変わらない毎日の中で、その存在はなぜか増していった。
それが何かわからないまま時が経ち、俺は次への道を拓くべくウィーンへの留学を決めた。
それを土浦に告げたとき、何故か急に心が痛くなった。
この先、土浦と言い合うこともなくなるのだと、もう会うこともなくなるのだと、そう思ったら更に胸が締め付けられるように痛かった。
確かに、人生は何が起こるかわからない。
俺が誰かを好きになることも、それが土浦だったことも、それに気付くのが離れるべき人生を選んだ後だったということも、俺は全く予想などしていなかった。
けれどこのままでは、面白いなどと思うことは出来ないだろう。
俺は気付いてしまったこの気持ちを、つまらない人生の通過点にしたくはない。
その結末がわからないのならば、俺は面白いと思える人生に変えてみせる。
人生に筋書きなどないはずだ。
俺は土浦を好きになった気持ちを、後悔になど変えたくない。
春までにはまだ時間がある。
ウィーンへと旅立つときは、人生は何が起こるかわからないから面白いのだと、そう土浦と笑い合っている人生を歩んでいたい。
2010.1
拍手第6段その3。
待ち受ける人生を、素晴らしいものにしてみせる。
月森君って何でこうも強気なんだろうと
書いている本人がたまに不思議に思います。
拍手第6段その3。
待ち受ける人生を、素晴らしいものにしてみせる。
月森君って何でこうも強気なんだろうと
書いている本人がたまに不思議に思います。