『音色のお茶会』
「雲のない空」
見上げた空は真っ青で、雲ひとつ浮かんでいない。花曇りの多い春にしてはめずらしい、本当に青い空。
暖かな陽射しと色付く花々はやっと訪れた春を存分に謳歌している。
それなのに俺の心は、まだ咲く気配を見せない硬い蕾のようだ。
空に雲があるように月森が隣に居るのが当たり前になった頃、お前は留学という道を選んだ。
雲がその形を変えるように、いつまでも留まってはいられないことくらいわかっていた。
だからその旅立ちを心から祝福し、笑顔で送り出したのは俺の本心だ。
けれど雲ひとつない空は、月森が遠くへと離れてしまった現実を俺に突き付ける。
当たり前であることなど、本当は何ひとつないのだと実感させられる。
それが当たり前ではなくなったとき、初めて気付く想いがある。
傍にいないからこそ、伝えたい気持ちがここにある。
伝えられないまま、時間だけが過ぎていく。
けれど新しい一歩を踏み出さなくては、本当に欲しいものは手に入れられない。
俺はいつかまた月森の隣に立つことを誓いながら、雲ひとつない青い空を見上げた。
2010.1
拍手第6段その2。
いつか俺も同じ場所に立ってみせる。
離れて初めて気付く…っていう話は定番ですが、
その先を、いつも書いていないような気もします。
拍手第6段その2。
いつか俺も同じ場所に立ってみせる。
離れて初めて気付く…っていう話は定番ですが、
その先を、いつも書いていないような気もします。