『音色のお茶会』
「地球儀にキス」
何の前触れもなく、夜中に目が覚めた。外はまだ暗く、ひっそりと静まり返っている。
ぬくもりを求めて手を伸ばしても、温かなものに触れることはない。
それが淋しくて、そんなことはわかっていたはずなのに心が痛い。
真っ暗な部屋が淋しさに追い討ちをかけるようで、急いで電気を点けてみる。
けれど明るくなった部屋に、俺は一人で佇んでいる。
机に置かれた地球儀の、日本とウィーンの距離はそんなに離れていない。
けれど本当は遠いのだと、こんな夜は嫌でも実感させられる。
触れることの出来ない代わりに、せめて声を聞きたくて電話を掛ける。
声を隣に感じれば、やっぱり触れたいと思ってしまう。
逢いたいと、抱き締めたいと、そう思ってしまう。
くるくる回る地球儀を、指でそっと止める。
想いを声に出す変わりに、そっと君の居る場所にキスをした。
2009.12
拍手第5段その4。
突きつけられた距離は思いの外、遠い。
自分の弱さを自覚している故に強がってしまう月森君。
逆バージョンっぽい話を書いたことがあるような…。
拍手第5段その4。
突きつけられた距離は思いの外、遠い。
自分の弱さを自覚している故に強がってしまう月森君。
逆バージョンっぽい話を書いたことがあるような…。