『音色のお茶会』
「二回目のキス」
月森に好きだと伝えられ、好きだと答えて、俺たちはキスをした。それは本当に触れただけだったが、俺たちにとって初めてのキスだった。
それからはなんとなくそんな雰囲気にならなくて、二回目はまだない。
あの日の出来事が夢だったのではないかと思うくらい、その先が何もない。
二人きりになっても会話が弾む訳でもなく、口を開けば何故か口喧嘩に発展する。
途中で気付いて文句の言葉を飲み込んでももう遅い。
険悪な雰囲気ではないが、微妙な空気が流れるだけだ。
思わず漏れたため息を見咎められたのか、月森の眉間が微かに寄った。
せっかく二人きりだというのにこんな雰囲気にしかなれない。
だったらため息くらい吐かせてくれてもいいだろうと、八つ当たりに似た思いで見遣る。
瞬間、不意に腕を引かれ、よろめいたと思ったら腕の中に抱き留められていた。
そして何の前触れもなく触れてきた唇が、二回目のキスになる。
だけど何も、こんな雰囲気の中ですることはないだろうと思わなくもない。
これではまるで、誤魔化されたような気分になってしまう。
初めてのときと同じように軽く触れただけで離れた月森を見れば、その目元はやけに優しい。
そっと抱き締めてくる腕に引き寄せられ、月森の体温をリアルに感じた。
急に訪れたその雰囲気に、俺はどうしようもなく恥ずかしくなる。
これじゃまるで、俺が拗ねてキスを強請ったみたいじゃないか。
あながち間違いでもないのかもしれないと気付いて、赤くなったのであろう顔を俯いて隠した。
2009.12
拍手第5段その5。
俺は次を期待していたのか、待ち侘びていたのか。
どうしてこんなに乙女になってしまうんだろう。
でも、やめられない…。
拍手第5段その5。
俺は次を期待していたのか、待ち侘びていたのか。
どうしてこんなに乙女になってしまうんだろう。
でも、やめられない…。