『音色のお茶会』
「キスの予感」
ふと、視線が絡んだ瞬間にキスをした。その行動は唐突過ぎたのか、唇が触れた瞬間さえも土浦は目を開けたままだった。
確かに、そんな雰囲気だった訳ではないのかもしれない。
俺たちはただ、二人で聴きに行った演奏会の話をしていただけだ。
嬉しそうに話すその言葉を心地いいと思いながら聞いていた。
俺は黙って話を聞きながら土浦を見ていて、土浦も話しながら俺を見ていた。
だから元々、目は合っていたが、あの瞬間はただ見ていただけではなかったような気がする。
「何だよ、急に…」
そう言われるのは尤もだ。
けれど俺にはその理由が自分でもわからない。気付いたときにはもう、俺は土浦にキスをしていた。
「いや、ただ…」
見つからない理由を探しながら土浦を見れば、不意にまた視線が絡んだ。
瞬間、心に何かが浮かぶ。
「キスの、予感がしたんだ」
俺の言葉に土浦は怪訝そうな表情を向けてくる。
そんな土浦をそっと引き寄せてもう一度キスをする。
小さなため息と一緒に、土浦の腕がそっと背に回ってきた。
2009.12
拍手第5段その2。
触れたいと思った気持ちに、予感という名前を付けた。
月森君は感情よりも行動のほうが早いイメージ。
そんな月森君に土浦君は振り回されているんだと思います。
拍手第5段その2。
触れたいと思った気持ちに、予感という名前を付けた。
月森君は感情よりも行動のほうが早いイメージ。
そんな月森君に土浦君は振り回されているんだと思います。