TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「酒は飲んでも…」*みときち様リクエスト&タイトル*

「だーかーら。お前のことが嫌いなわけじゃないって何度言ったらわかるんだよ」
 俺は飲んでいたビールの缶を思い切りテーブルの上に置きながらそう言った。
「酔っている君に言われてもいまいち信用できない」
 そう言う月森の手にもカクテルの缶が握られている。
「君はいつでも何か文句を言いたそうな顔で俺の演奏を聴いているじゃないか」
 少し拗ねたように一口煽ると、月森は俺に詰め寄ってくる。
「文句って言うか…。お前の演奏はすごいって思ってるさ、素直に認められないだけで…」
 だんだん語尾が小さくなるのを誤魔化すように、ビールへと口をつける。
「それにお前も、俺が弾いているときは、弾けるのが当たり前って顔で聴きやがって…」
 負けじとテーブル越しの月森へと詰め寄れば、二人の距離が急に近付く。
「君のように優れた弾き手が弾けないはずがないと思っていることは確かだ」
 褒めているんだかそうじゃないんだか、月森の言葉はやけに淡々としている。
「けれど君は、俺が思っている以上の演奏をするからいつも驚かされる」
 どうやら褒めてくれているらしいが、ほとんど無表情だからいまいち気持ちが伝わってこない。
「お前、酔ってるだろう。お前がそんなこと言うなんて信じられるか」
 俺への褒め言葉なんて今まで一度だって聞いたことがない。
「嫌いなやつのこと褒めたって、何の得にもならないぜ」
 あからさまに大きなため息をついて、俺は残っていたビールを一気に煽った。
「君こそ何度言ったら、俺が君を嫌いじゃないとわかってくれるんだ」
 空になった缶を月森に取り上げられ、それまで以上に詰め寄られる。
「じゃあ、なんで俺と話すときはいつも無表情なんだよ。たまには違う表情を見せろ」
 今だってそうだ。こんな風に言い合っていても月森はあまり表情を変えない。
「君だって他の人とは楽しそうに話すのに、俺とは目が合っただけで不機嫌な顔になる」
 無表情だと思っていた月森の顔に、どこか拗ねたような表情が混ざって、ちょっとドキッとする。
「じゃ、じゃあ、俺が笑顔で話し掛けたらお前も笑顔で返事してくれるとでも言うのか?」
 その気持ちを誤魔化すように早口で言うと、月森は少し考えるように黙り込んだ。
「どうせ、そん…」
「もしも俺が…」
 そんなこと出来る訳がないと、そう言おうと思った俺の言葉に、月森の言葉が重なる。
「俺が笑顔で返事をしたら、俺が君のことを嫌っていないと、信じてもらえるだろうか」
 目の前に、本当に目の前に月森の照れたような笑みがある。
 その笑みにくらりと頭が揺れたような気がするのは、ビールに酔った所為なんだろうか…。



2009.11
拍手第4段その3。
もしかしてお前、そんなに酔ってないのか?
俺も、酔ってる訳じゃなかったりするのか?

うっかり本音が出てるのに、微妙に気付いてないらしい。
つっきーの行動は、無意識なのか、確信犯なのか…。
リク内容は、「LRで飲み会。互い意識し始めているけど、まだ仲は悪く、
お酒が入って普段見られない、本音が出てしまう二人」でした。