TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「99.9%」

 好きになることなんて、そんなこと絶対にありえないと思っていた。
「俺は、月森が好きなんだ…!」
 それなのに、月森にそう告げている自分がここにいる。
 好きになってもらえることなど絶対ないことくらい俺だってわかっている。
 ほらみろ、月森の眉間にさっきより皺が増えたじゃないか。
「俺をからかうことがそんなに楽しいか」
 冷たい月森の声に、売り言葉に買い言葉とはいえ言ってしまったことを後悔する。
 だからといって冗談だと繕っても後の祭りだし、もっと怒らせるだけなのは目に見えている。
「嬉しくないだろうが本気だ」
 こんなこと言ったって月森にとっては迷惑なだけなんだろうが、もう後戻りは出来ない。
 驚いたように見開かれた瞳を受けながら、こうなったらとことん嫌われてやると思う。
「友達とか親友とか以上の意味でな」
 あぁ、これで完璧に嫌われたなって思ったら、胸にチクリとした痛みが走る。
「本気、なんだな?」
 真剣な表情で問われて返事をしようと口を開くが声にならず、小さく頷くことでそれに答える。
 その表情を変えることなく月森が近付く気配を感じ、俺は言われるのであろう言葉に覚悟を決める。
「俺も、土浦ことは嫌いではない」
 けれど俺の耳には理解不能で信じられない言葉が届く。
「好きなのかどうかはわからない。でも、君の気持ちは嬉しいと思う」
 相変わらず感情の読めない表情はしていたが、眉間の皺はひとつもなくなっている。
 つまり俺は、嫌われてはしなかったってことなのだろうか。
「それは、よかった…」
 って、ことなのだろうか。
 こんな展開になるなんて、絶対にないと思っていたのに…。
「だが、さっきの君の意見に同意することは出来ない」
 もう一度寄せられた眉間の皺と共に言われた言葉に、さっきまで言い合っていたことを思い出す。
 あぁ、やっぱり。月森と俺で、うまく納まるわけがない。
「そこは俺も譲れないぜ」
 きっとこれからの俺たちも相変わらずで、二人の気持ちがどうなるかなんて本人にもわからない。
 でも、同じ気持ちになることは絶対ない、とは言い切りたくないと、そんな風に思った。



2009.5.18
拍手第3段その4。
絶対にない確率が100%なのだとしたら
今やっと99.9%になったところかもしれない。