『音色のお茶会』
「3cm」
土浦を壁へと追いつめて、そっと唇を寄せる。文句を言うために開いたのであろうその瞬間を見逃しはしない。
けれど君の唇は俺のそれよりも上にあって、軽く背伸びをしないと届かない。
それがわかっているのか、背中をピタリと壁に付けて逃げ場のない君は、俺と同じように背伸びをして上へと逃げる。
大きいと思ったことも小さいと思ったこともない自分の背が、ほんの少しの身長差で小さく思えてしまうのが悔しい。
触れたいのに、君に届かないことがもどかしい。
「なぜ逃げる」
同じく少しだけ見上げる位置にある目を睨むように見つめれば、
「なんでって、ここ学校じゃねぇか…」
睨み返しつつも困ったように揺れた目と合う。
こんな時、ただ睨み返してくれればいいものを、なんでそんな表情を俺に見せるんだ。
「だったら誘わないでくれ」
無理やり壁と君の隙間に手を差し入れて、腰へと手を這わす。
「うわっ」
驚いた声とともに、膝の力が抜けたのか背伸びをしていた身体が下りてくる。
ようやく届く距離に降りてきた唇を塞いでしまえば、あとは壁伝いにズルズルを滑り落ちていくだけ。
それを追いかけながら、俺は深く深く口付けた。
2008.9.4
拍手第2段その3。
あるようでない身長差。
ないようである優位。
拍手第2段その3。
あるようでない身長差。
ないようである優位。