『音色のお茶会』
空を泳ぐ魚2 *
ゆっくりと、その感触を楽しむように触れていくと、その動きに合わせて微かな反応を返す土浦が本当に愛しいと思う。わざと触れるか触れないかの距離で指を行き来させれば、まるでねだるように身体をシーツから浮かせてくる。
無意識にとったその行動が恥ずかしいのか、奥歯を噛み締める強さで目が伏せられた。
そんな風にして見せる表情に煽られながら、でももっと見ていたくて微妙な距離を保ったまま触れていく。
「れん…」
小さく聞こえる俺の名を呼ぶ声に聞こえないふりをすれば、探すように伸びてきた手に腕をつかまれた。
「どうした?」
わかっていながら、敢えてそんな風に尋ねる。
にらむように向けられる視線を受け流せば、腕をつかむ手の力が強くなったような気がした。
「じらすなよ…」
土浦の手に引き寄せられ、熱いそこへと指が触れた。
きっと自覚はないであろう誘うように濡れた瞳を見せられて、これ以上我慢が出来る訳がない。
「っんあ」
誘われるままにそこへと刺激を与えれば、甘い嬌声と一緒に身体が小さく跳ねた。
首筋へと顔を埋めると、くすぐったそうな声が上がり、滑るような動きで肌へと唇を寄せれば、その身体は弓なりに反らされていく。
ゆっくりと、けれど確実に快楽を引き出すように触れていけば、その快楽を受け入れるように揺れるその姿に煽られる。
「あっ!」
キスをしようと顔を寄せると、急にパチリと目が開かれた。それは何かを思い出したかのようにとてもはっきりとした表情と視線で俺を見つめてくる。
「梁太郎?」
思わず動きを止めれば、今度は急に頭上の壁へとその視線を動かした。
誘うような仕草を見せたと思ったら今度は思い切り視線をはずされ、また何か別なことに土浦の心が捕らわれてしまったのだと気付く。
俺の心はまた独占欲に支配され、触れたそこをぎゅっと握り締めた。
「あぁっ、蓮、待て、ま、あっ、あぁっ」
何かを言いたげに向けられる視線を無視する。これ以上、他の何かに心を捕われさせはしない。
「蓮、まっ」
まだ紡がれる言葉をキスで塞げば、まだ何かを言いたげに首を振っていたが、しばらくするとおとなしく反応を返すようになった。
肌の上を撫で上げるように触れれば、唇が離れて高い声が上がる。閉じられた瞼から一筋の涙が零れ落ち、その涙へと唇を寄せればまた甘い嬌声が上がる。
その声をもっと聞きたくて、震えるような反応をもっと見たくて、早急に追い上げていく。
本当はもっとゆっくり、二人で感じ合いたいと思っていた。こんな一方的な愛撫を土浦が望んでいないこともわかっている。
まるで土浦の自由だけを奪っているようで心が痛かったが、でもこの衝動を止めることができない。
「蓮、れんっ」
握られた手の力がすがりつくように強くなり、堪えるように身体全体にも力が入ったのが伝わってくる。
「もう、止め…、ダメだ、蓮っ」
止めろと言われても止められない。
また一筋こぼれた涙を唇で吸い、その唇をそっと耳元へ寄せる。
「梁太郎、愛している…」
瞬間、土浦の身体が大きく跳ねた。
「あぁっ、俺も…」
握られた手には更に力が込められ、そして手のひらに熱が放たれたのを感じた。