TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

『parallel mind』 variation ~変奏曲~ 8

「君が好きだったんだ」
 聞こえた月森のその言葉に、俺は伏せていた顔を上げた。
 瞬間、真っ直ぐに、本当に真っ直ぐに二人の視線が交わった。
 俺を真っ直ぐに見つめてくる月森の視線は、昨日の再会で感じた切なさを思い出させた。
「嘘だ…お前、だってそんなこと、あるわけが…」
 ない。そんな都合のいいことがあるわけがない。聞こえた言葉が信じられない。
「嘘だと思われても仕方がないが、ずっと好きだった」
 いつだって揺るぎなく真っ直ぐに前を見ているはずの月森の視線が逸らされ、小さくすまないと、そんな声が聞こえた。
 月森には好きな人がいたはずだ。それがいつどこで俺に変わったというのだろうか。
「でも、この気持ちに嘘偽りはない」
 もう一度、真っ直ぐに見つめてきた月森の瞳は、痛いほどに真剣だった。

「本当、なのか…?」
 恐る恐る確かめるような土浦の声が、心に痛い。
 驚き揺れるその瞳は、それでもまるで縋るように俺のことを見ている。
 その視線には見覚えがあった。それは胸を締め付ける切なさとともに昨日の再会の場面をよみがえらせた。
「土浦が好きだ。けれどずっと言えなかった」
 他に、好きな人がいるのを知っていたから。
 だから今、この気持ちを打ち明けることは迷惑になるのかもしれないが、この気持ちはもう隠せない。
 例えそれが、叶えられないとわかっていても。
「俺も、ずっと言えなかった。ずっと…」
 胸の痛みを耐えるように目をつぶった俺に、静かな声が届いた。
「お前が好きだったんだ」
 目を開けると、困ったように笑う土浦が目の前にいた。