『音色のお茶会』
『parallel mind』 pain ~イタミ~ R *
バラバラにされそうだ…。俺はそう思いながらぎゅっと目をつぶった。
どうしても慣れることのない、月森自身の圧迫感に身体が逃げそうになる。
それがわかっているかのようにゆっくりと動かれて、快感が呼び覚まされる。
決して無理強いはされていないのだと気付いたのはいつからだろう。
そんな普段からは考えられない表情や優しさを知ったのは、一体いつだったのだろうか。
けれどお前の心は俺に向いていない。
ならばせめてこの瞬間だけでも…。
俺の感じる全てを目に焼き付けたくて、うっすらと目を開けた。
焦点の合わない視界に、その表情がゆっくりと映り込む。
「なんだ」
目が合った途端、その表情が何の感情も読み取れない、冷たいとさえ思わせるものに変わる。
一瞬、見たと思った俺を見つめる眼差しはたぶん気のせいなのだろう。
そんな風に見られることなど、ある訳がないとわかっている。
それとも俺ではない誰かを見ていたのだろうか。
「誘っているのか」
まるで見下ろすような瞳は、俺には何の感情もないのだと言われているような気がして心が痛くなった。
そんな視線が辛くて、俺は引き寄せるように首へと腕を回して顔を伏せた。
その動きが意図せず、まるで月森の言葉を肯定したかのように繋がりを最奥へと誘ってしまう。
「っ…」
息を詰めたような短い声が聞こえて俺はもう一度、そっと視線を上げて顔へと向けた。
垣間見たその表情は、冷たくもなく無表情でもなく、快楽に浮かされている。
そんな表情を今だけでももっと見たくて、見せてほしくて更に引き寄せる。
「煽るだけの覚悟は出来ているのだろう」
そんな言葉とともに急に動かれて、思わず回した腕に力が入ってしまう。
あまりにも早急過ぎて、押さえようのない快楽が確実に引き出されて理性が保てなくなりそうになる。
「熱い、な…」
耳元で熱くささやかれ、俺は無意識に首を振った。
身体が快感を追い始めるとまるで踏みとどまるように心が冷めていくくせに、その心を満たしたくてまた快楽を求めてしまう。
身体に気持ちが着いていけなくて、気持ちに身体が着いていけない。
とにかく俺は声を出すまいと必死に唇を噛み締めた。
「なぜ声を出さないんだ…」
そんな俺の努力を破るように、甘いささやきとともに食い縛るように閉じていた唇に優しい指が触れる。
けれどお前の心は、俺に向いていない。
『parallel mind』 pain ~イタミ~