『音色のお茶会』
想いが重なるとき1
二人の想いは平行線。近寄りながら、離れながら。
戸惑いながら、自覚しながら。
だから想いがすれ違う。
最終セレクションまであとわずか。
数日前から二人の音色は揺れていた。
それは聴く者を心地よくさせる音色だったり、曇った音色だったり。
本人たちも気付いている。それが何ゆえかも。
だから聴かせたくない。だから聴いてほしい。
本当は、たった一人だけに聴いてほしい。
でも今は、逢いたくない。いや、顔を合わせたくない。
逢えば、言い合いになってしまうから。
でも今、話をしたら…言い合いになったら…。
その先を、二人は考えないようにしていた。