TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「airport」

『8:25 成田着』
 到着時刻だけが書かれた月森のメールに
『了解』
 至極簡潔なメールを送り返した。

 ラジオで発着便の情報を聞きながら空港へと車を走らせる。
 いくつかの便に到着時刻の変更があったが、ウィーンからの便は定刻通りに運行しているようだ。

 8時20分、空港到着。
 別に、展望デッキから飛行機の到着を確認することまではしないが、迎えに来るときはいつも到着予定時刻には空港に着いているようにしている。
 そして、入国手続きをしているであろう時間を、空港内の待ち合わせ場所にしているカフェで過ごす。
 待つ時間というのも悪いものじゃない。ゆったりとコーヒーでも飲みながら時間をつぶしていればいい。

 空港には色々な人が集まる。
 出会いがあれば、別れもある。そのどちらでもなく、その場を訪れる者もいる。
 喜びや悲しみが混在し、嬉しさや切なさが行き交っている。
 俺はその空気を感じながら、ゆっくりとその瞬間が訪れるのを待っている。

 カップへと手を伸ばそうとして、不意に呼ばれたような気がして顔を上げれば、店の入り口に待ち人の姿を見付けた。
 同じタイミングで向こうも俺を見付けたのだろう。視線が合い、お互いの顔に笑顔が浮かぶ。

「おかえり」
 向かいの席へと座ったタイミングで声を掛ければ
「ただいま」
 真っ直ぐな視線とほっとしたような表情が返ってくる。

 この瞬間が、たまらなく愛しいと思う。
 いつもと同じ待ち合わせ場所、いつもと同じ挨拶、いつもと同じ笑顔。
 そして俺は、変わることのない想いを再確認する。



2011.1 拍手第10段その1。
airport(空港)

帰国した月森君と空港で待ち合わせ。
何気ない日常のひとコマっぽくって、でも特別な時間っていう雰囲気。
のつもりで書いたのですがどうでしょう?