TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「もう、終わりにしよう」

 月森と喧嘩をした。
 原因は本当に些細なこと。そして、全面的に俺に非があると、自覚している。
 けれど言い出した言葉を違えることも後に引くことも出来ず、次から次へと出てくる言葉を止められなかった。
 最後には、頭を冷やしてくると言って勝手に喧嘩を終わらせ、俺は部屋を飛び出した。
 行く当てなんてあるわけもなく、けれど落ち着いた場所に座りたくて近くのカフェへと入った。
 静かに流れてくる曲に心が落ち着いてくると、同時に自己嫌悪を感じずにはいられなくなる。
 思わずカッとなってしまったが、今思えば本当にくだらない些細ないことだったのだと思う。そして何をそんなに意地を張っていたのだろうとも思う。
 そう思うなら今すぐに部屋へと帰り月森に謝ってしまえば済むことだ。喧嘩の後の気まずさは時間が経てば経つほど増してしまうことも身に沁みて知っている。
 なのに俺はこの席を立つことが出来ない。
 頭を冷やせば冷やすほど、俺は取り返しのつかないことをしてしまったように思えて気分が沈んでいく。
 ため息を隠すようにコーヒーを飲めば、とっくに冷めていて苦みだけが口に残る。それが今の心境に合い過ぎて、やけに悲しくなる。
 たかが喧嘩なのに、俺は何故こんなにも落ち込んでいるのだろう。それこそ喧嘩なんて俺たちにとっては日常茶飯事で、挨拶代わりみたいなものじゃないか。
 でも、そろそろ少し素直な気持ちで接してもいい頃なのかもしれない。喧嘩しているほうが俺たちらしいなんて、そんなのは素直になれない自分へのただの言い訳だ。
 わかっていても素直になれない自分にため息を落とした瞬間、ガラス張りの店の向こうに月森の姿を捉えた。
 俺を探しに来たのだろうか。どこか焦ったような、心配そうな、そんな表情が見える。
 あぁ。月森もきっと、俺と同じことを考えていたんだろう。そして俺よりも先に、月森は行動を起こしたんだ。
 俺は急いで店を出て、月森を追いかけた。
 喧嘩して言い合って、自己嫌悪に陥って後悔するくらいなら、もう意地を張るのは終わりにしよう。
「月森っ」
 名前を呼んで振り返ったら、素直にごめんと、今なら言えそうな気がする。



2010.3
拍手第8段その7。
そしてもう少し違う関係を築いていきたい。

言い訳したり後悔したり、素直じゃない土浦君を
ちょっぴり素直にさせてみるのは楽しいです。