『音色のお茶会』
「わかっていると思っていたんだが」
俺は土浦が好きだ。そんな自分の気持ちは、けっこう前から自覚していた。
そしてその気持ちが、友達や親友以上のことを望んでいるということもちゃんとわかっていた。
ただ、この気持ちを口に出すことで何かが変わってしまいそうだと思ったから、俺は言葉にも態度にも出さないようにしてきた。
「なんか誤解されてるみたいだから言っておくけど、俺は別にお前のこと、嫌ってるわけじゃないからな」
ある日、土浦は俺にそう言った。
「気に入らないところがあるだけっていうか…。いや、それじゃ嫌いって言ってるようなもんか…」
土浦は真剣な顔で懸命に言葉を探している。
「なんて言ったらいいかわからないけど、嫌いじゃないって、それだけは言っておきたかったんだ」
微かに視線は逸らされて俺を見てはいなかったけれど、そこには俺の見たことのない笑みがあった。
土浦の言いたかったことは、ちゃんと俺に心に届いた。
その気持ちを伝えようとしてくれたことに、今まで俺には見せなかった表情を見せてくれたことに、愛おしさが募っていく。
もう、そんな気持ちが自分の中にあることなどとっくに自覚していたが、気持ちを隠し過ぎて自分でも忘れていたらしい。
そんな俺の態度が土浦に誤解を与えていたのだと気付いて、今更ながらに後悔する。
「俺も嫌ってはいない」
だから俺はそう答えた。
「いや、俺は、君のことが好きだ」
この想いは口に出してはいけないものだと思っていた。
「土浦が、好きだ」
この気持ちが俺の中にあることを、俺はとっくにわかっていると思っていたはずなのに。
口に出して初めて、俺は俺が思っていた以上に、土浦のことを好きになっていたことに気付いた。
2009.11
拍手第4段その10。
言葉にしないと決めたときに、
俺は自分の気持ちも忘れてしまったらしい。
つっちーに向けた台詞と思いきや、自分に向けた台詞でした。
たぶんきっと、両思いだと思います。
というわけで、あかさたなはまやらわ、でした。
恋の始まりっぽい話が多め(というかほとんど)です。
拍手第4段その10。
言葉にしないと決めたときに、
俺は自分の気持ちも忘れてしまったらしい。
つっちーに向けた台詞と思いきや、自分に向けた台詞でした。
たぶんきっと、両思いだと思います。
というわけで、あかさたなはまやらわ、でした。
恋の始まりっぽい話が多め(というかほとんど)です。