TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

「あと一歩」

 いつだって意見の合わない俺たちだけど、心の底から嫌いなわけじゃない。
 むしろ好きなんじゃないかって、最近、気付いてしまった。
 その口調や視線に、そして考え方にさえ心が傾いている。
 でも素直にはなれなくて、心とは逆の言葉が口に出る。
「なんで君は…」
「なんでお前は…」
 ためいきも、思わずつぶやく言葉も、全く同時だったから、続く言葉が出てこない。
 びっくりしたように見開いた瞳が俺を見ていたけれど、きっと俺も同じ表情をしている。
「意見が合わない割には、タイミングは合うんだな」
 普段、あまり見たことのないやわらかな表情で言われ、俺は更に言葉を失った。
「君の意見は俺と違い過ぎて、でも考えさせられることがある」
 そう言って、お前はゆっくり近付いてくる。
「違うからこそ楽しいんだ、土浦と話すのは」
 あと一歩、たった一歩の距離に、お前は立っている。
「月、森…」
 なぜか、声がうまく出ない。
 込み上げてくるようなこの感情は、高鳴る胸の鼓動はなんだろうか。
 それを確かめたくて、残りの一歩は俺から踏み出した。



2008.8.29
拍手第2段その1。
その気持ちに気付くまであと一歩。
恋人同士になるまであと一歩…?