『音色のお茶会』
「通学路」
通い慣れたこの道を、今までは真っ直ぐ学校を目指して歩いていたのに。大きな交差点の少し手前の路地で、ふと右を向く癖が付いてしまったのは。
その道が、君の家から続く通学路だと知ってしまったから。
その表情が笑顔に変わる瞬間を見たくて、俺はその道に君の姿を探してしまう。
待ち合わせをしているわけではないから、逢えないときもあるけれど。
だからその姿を見つけたときは、きっと俺も笑顔を向けているのだろう。
今日も、もうすぐ路地に差し掛かる。今日は逢えるだろうか。
「よ、月森。おはよう」
俺が右を向く前に、その路地から一歩踏み出した彼は笑顔で。
路地を出て、進行方向と逆の左を向いてくれたということは。
「おはよう、土浦」
俺の姿を探してくれたのだと、自惚れてもいいだろうか。
「今日はいつもよりゆっくりだな」
そして続いたその言葉に、その思いは確信に変わる。
「少し、考え事をしながら歩いていた」
君のことを考えていた、とは言わなかったけれど。
ただ、学校へと向かうだけだったこの道が少し特別なものに変わったのは。
君に出逢い、君を見つけ、君に見つけられたからだと。
そう思って、俺は心が温かくなるのを感じた。
2008.3.5
拍手第1段その5。追加分その2。
二人の家の距離間隔が謎ですが…。
そんな待ち合わせしていてほしいなって感じです。
拍手第1段その5。追加分その2。
二人の家の距離間隔が謎ですが…。
そんな待ち合わせしていてほしいなって感じです。