『音色のお茶会』
雪うさぎ ~独占欲~ *
誰にも見せたくないけれど誰かに見せつけてもみたい
「月森…」
落ち着かない、そんな表情でキスとキスの間に呼ばれる名前が、何故だか分かっていて分からないふりをする。
視線が、俺ではなくその背後を気にしてゆらゆらと彷徨い、何かを言おうと開いた口が、でも言えずにためらいがちに閉じられた。
「どうした?」
分かっていて、わざと問い掛ける。
きつくにらむような目線を送られて、それでもそれに気付かないふりをしてもう一度唇を寄せる。
触れる直前に顔をそらされ、引くふりをしてうなじにそっとキスを落とす。
「っ、月森…!」
慌てたようなその声を無視して、やわらかな首筋に軽く歯を立てた。
身体が跳ね、ぎゅっと握られた服に皺が作られた。
ゆっくりと顔を上げると、切なげに揺れる瞳が俺を見つめている。
「土浦…」
その目元に、唇に触れるだけのキスをしてそっとささやく。
「頼む、から…」
揺れる瞳が俺とその背後を捉えてから伏せられ、切れ切れの言葉で訴えられる。
その視線が捉えたであろう物を確認するように、俺は振り返った。
机の上に置かれた雪うさぎが、じっとこちらを見ている。
さっきまで真っ白だったそれは、部屋の温度で溶かされてうっすらと透明になっていた。
「気になるか」
視線を土浦に戻して問い掛けると、その頬に朱が走る。
「見られているみたいで、落ち着かない」
その視界に、こちらを向いた雪うさぎの赤い目が映るのだろう。
そんなこと、わかっていた。雪うさぎを作ったのも、机の上に置いたのも俺なのだから。
「でも、本物ではないだろう。それに…」
訴えを無視するように唇を寄せ、触れるか触れないかの距離で止める。
「そのうちきっと溶けてしまう」
雪で作られたそれは、暖房の中に置いておくものではない。
別に、部屋に置くつもりで作ったわけではなかった。こんな風に、嫌がらせるために置いたわけでもなかった。
けれど、そんな気持ちが全くなかったわけでも、ないのかもしれない。
「だからって、お前は気にならないのかよ」
逃げるように唇が離れ、にらむように見つめられる。
「俺は、土浦しか気にならない」
離れた唇を追って、今度こそ口付ける。
「だから君も俺だけを見ていてくれ」
俺以外を見ないでほしい。俺以外を気にしないでほしい。
本当は、俺以外には誰にも見せたくない。見てほしくない。
けれど…。
「勝手なこと…」
文句を言いかけた唇を、深い深い口付けで塞ぐ。
俺以外のことなんて考えられないように。周りなんて気にしないように。
俺だけを、感じてくれ。
「…ぅん…月、森ぃ…」
甘く漏れ聞こえた声に、俺は土浦をそっと抱き寄せた。
その熱に全て溶かされて
水の中に赤い実がふたつ
雪うさぎ ~独占欲~
2008.3.13
コルダ話12作目。
雪うさぎ第3段。お部屋で雪うさぎ編。
ダークだし、微裏だし…。
雪うさぎである必要があったのかどうか。
コルダ話12作目。
雪うさぎ第3段。お部屋で雪うさぎ編。
ダークだし、微裏だし…。
雪うさぎである必要があったのかどうか。