『音色のお茶会』
幸せの続き(R18)
抱き締めて、キスをして、抱き締めて…。その目を覗き込めば瞼で隠すのに、俺の見ていないところでは不安そうにその瞳を揺らしている。
抱き締めて告白した俺に言葉での返事はもらえなかったが、背に回された腕が俺を強く抱き締めてくれたことがとても嬉しかったし、もっと触れたくて部屋へと誘えば小さな頷きが返ってきてホッとした。
だが今、その目は不安そうに揺れながら俺を見つめている。
瞳を隠した瞼に小さなキスを落としながら嫌かとささやけば、ピクリと身体が過敏な反応を返してくる。
首を振り、小さく違うと答えてから開かれた瞼の下には、だが言葉とは裏腹な不安そうに揺れる瞳がある。
それならばどうしてと問う代わりにキスを落とす。薄く開く唇に誘われるまま舌を差し入れれば、答えるように絡んできた。
確かに、嫌がっている風ではない。隠した本心を覚られないように我慢している風でもない。だがやはり揺れる瞳を思い出せば、このまま抱いてしまっていいようには思えない。
違うと言った、その言葉も気になる。嫌なわけではないが別の理由があると、そういうことなのだろう。無意識なのかもしれないが、つまり俺が嫌かと問うた理由をわかっていての返事だったということだ。
それなら何故とあえて明確な言葉にして聞けば、逡巡の後に瞼が上がり、不安そうな瞳が俺を見つめてきた。
「夢みたいで、怖い…。俺から言い出したのに、俺がお前から離―――ぅん…」
真っ直ぐに素直な返事が返ってきて少し驚いたのと同時に、胸が締め付けられるような切なさを感じ、続く言葉を聞きたくなくてキスで口を塞ぐ。
一度口から出た言葉はもうなかったことには出来ないし、きっと一生忘れることも出来ない。それでも捉われたままではいてほしくない。
夢でも幻でもない。俺が好きなことも、俺が触れていることも、全て現実だ。だからもう間違わないでくれと必死の思いで抱き締めれば、それ以上の強い力で抱き締め返される。
繰り返し名前を呼んで、想いを言葉にして、シャツのボタンを外すのももどかしく素肌に手を這わす。もう余計なことなど考えられないように、早急な手つきで全身に触れていく。
同じように繰り返し呼ばれる名前に、心が、身体が熱くなった。
感じやすいと記憶している場所を指と唇で辿れば、その度に確かな反応が返ってくる。
小さく漏れた嫌だという声が言葉通りの意味ではないことなどわかっているから、俺は止めることなどせず更に追い込んでいく。
声と顔を隠す邪魔な手をやんわりどけて手のひらから握り締めれば、俺よりも少し強い力で握り返された。
そんなひとつひとつの行動と表情を堪能する余裕が今の俺にはなく、早くもっと確かに感じたくて最奥のその場所へと手を伸ばした。
「あっ、まだ無、理…っ、……いっ、ぅんっ」
そこは硬く閉ざし、俺の指の侵入を拒む。それでもその先にある何かを思い出したように小さく開いた瞬間を逃さず、熱いその中へと指を進めた。
上がる声は決して甘いと言えるものではなく、それでもこの衝動は止められず、せめて少しでも苦痛ではなく快楽を感じてほしくて胸へと唇を寄せ、中をゆっくりと探っていく。覚えのある場所に触れれば嬌声が上がり、頑なな締め付けが少しずつ緩んで違う動きへと変わっていく。
指を増やせばまた苦痛の声を上げさせてしまったが、それは段々と甘くなり、震える声で俺の名を紡がれれば愛しさが増すばかりだった。
名前の合間に零れる切れ切れの言葉を繋ぎ合わせれば、それは俺を求める言葉になる。ゆっくりと顔を上げてみつめれば、その目は同じ言葉を俺に語りかけてくる。
早く、もっと、お前を感じたいんだ、と。
そんな顔を見せられて、そんな言葉を口に出されて、ギリギリのところで踏み止めていた気持ちをこれ以上、抑えることなど出来なかった。
指を引き抜けば切ない声が漏れ、そこへ俺自身を宛がえば更に切ない声が上がった。首へと回された腕が、赤く色付く唇が、やわらかく綻んだその場所が、その全てが俺を中へと誘う。
ゆっくり俺を刻み付けるようにと思う心とは裏腹に、身体は久し振りに感じるその熱の中に溺れて、俺の中にその熱が刻み込まれていく。
張り詰めた自身に手を添えれば強く首を振って限界を伝えてくるから、俺は動きを追い上げるものへと変えていく。
もうすでに言葉ではなく嬌声しか上げられなくなっている唇に深い口付けを落とせば、絡んだ舌が強く引き寄せられ、解けた瞬間にいっそう高い嬌声が響き渡った。強く締め付けられたその熱の中で俺も高みへと上り詰めその身体を抱き締めれば、耳元に甘いため息のような声で名前をささやかれた。
俺はそれをもっと聞いていたくて、この腕の中にある熱さをもっと感じていたくて、抱きしめる腕に力を込めた。
幸せの続き