『音色のお茶会』
海に瞬く星3 *
ひとつひとつを確かめるようなそんな触れ方に、俺はどうしようもなく追い上げられていくのを感じていた。考える暇も何も与えられないまま早急にいかされた後、こんな風にゆっくりと触れてくるのはずるい。
「蓮っ、もぅ、やっ…」
止まらない涙と抑えることの出来ない声を隠したくて、俺は月森の肩口へとすがりつく。けれどそれを許してくれない月森の身体は、ゆっくりとずれていった。
見下ろす位置にある月森の瞳がじっと俺を見ているのを、目をつぶっていても感じる。
手はやんわりと握られていて顔を隠すことは出来ず、俺はせめて少しでもその視界から逃れたくて首を振った。
「そんなに、見る、な…」
切れ切れに訴えると、顔が近づいてくる気配を感じた。
「嫌だ…」
そんなはっきりとした返事が、耳元でささやかれる。
その声も、掠めていく髪の感触も、触れたところから伝わる体温も、その何もかもが俺の理性をことごとく奪っていく。
「梁太郎…」
ゆっくりと触れてきた唇は熱く、身体中で感じる月森はそれ以上に熱くて、俺はその熱の中に溶かされていった。
まるで離さないと言わんばかりに背へと回された腕に抱き締められたまま、俺は月森の体温を感じ、月森の鼓動を聞いていた。
月森の指が俺の髪を梳いていくその感触が少しくすぐったいが心地いい。
この状態がほんの少し暑いと思ってしまうのは、季節の所為だけではないのかもしれない。
「梁太郎…」
呼ばれてそっと顔を上げれば、触れるだけの優しいキスが唇に落とされた。
「誕生日、おめでとう」
そして、そのキス以上に優しく微笑んだ月森の言葉が俺の心を温かくする。
もうそんな時間なのかと時計の掛かる頭上へと顔を向ければ、長針も短針も12を差していた。
「サンキュ。その言葉、直接聞けるのはやっぱり嬉しいな…」
お礼に俺からも触れるだけのキスをする。
今年は一緒に過ごすことはできないはずだったから、余計に嬉しい。
「俺も君の誕生日を一緒に祝えることは嬉しい」
お互いの顔が見える距離まで離れていた身体が、回された腕によってもう一度引き寄せられる。
ガラにもなく、幸せだ、なんて思ってしまう。
「君にとって最高の誕生日になることを…」
つぶやくような月森の言葉を聞きながら、俺も月森へと腕を回した。
そしてお互いの体温を感じながら、俺たちは眠りについた。
月森のその言葉に込められた本当の意味を、このときの俺はまだ気付いていなかった。
海に瞬く星
2009.7.24
コルダ話47作目。
HappyBirthday土浦君♪
「海に浮かぶ雲」と「空を泳ぐ魚」の続きで…。
そして更に話は続いていく予感…。
コルダ話47作目。
HappyBirthday土浦君♪
「海に浮かぶ雲」と「空を泳ぐ魚」の続きで…。
そして更に話は続いていく予感…。