TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

『parallel mind』 birthday ~タンジョウビ~

 夏休みが始まって数日の7月25日。
 特に何を期待する訳でもなく、けれど何かを期待して学校へ来てしまう。

 練習室を予約しているから。
 部活に顔を出す予定だから。

 そんな言い訳をしながら、本当は今日という日だからこそ、学校へ行く口実をちゃんと作っていた。

 直接、言うことは出来ない。
 直接、言ってくれる訳ない。

 それならばせめて…。

 練習室に響き渡り、外へと流れ出るその曲は誰もが知っているメロディ。
 Happy Birthday to you
 Happy Birthday dear …

 届いて欲しい。
 届けて欲しい。
 
 君が生まれたこの日を、俺は一緒に祝うことは出来ないけれど。
 俺が生まれたこの日を、一緒に祝ってはもらえないけれど。

 せめてこの曲を君に届けたくて、それでも自分からだと気付かれないように、ヴァイオリンではなくピアノの音色に乗せて。
 聴こえてきたその曲はあまりにタイミングが良過ぎて嬉しい反面、望んでいる音色とは違うことが、何故か少し悲しくて。

 例え本人に直接、届かなくても、伝えられなくても。
 曲に込められた想いが伝わって、切なくもなるけれど。

 この曲を君がどこかで聴いていてくれればと願いながら。
 この曲をこの日に聴けたことはまるで俺のためのようで。

 君の誕生日を、君がこの世に生まれてきてくれたことを、心から祝おう。
 その音色を奏でてほしい人に想いを馳せ、生まれてきた日を過ごそう。



『parallel mind』 birthday ~ンジョウビ~
2008.7.24
コルダ話20作目。
つっちーお誕生日おめでとう♪♪
なのにこのシリーズ番外編で少々、不幸せ?
幸せなお話は当日に…。