TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』 音楽用語のお題

atempause

 それは本当に一瞬の出来事で。
 いったい何が起こったのか考える暇さえなかった。

 月森の気持ちは聞いていたし、それに対する答えも一応伝えてあった。
 だからいつかはあるのだろうと思ってはいたけれど、俺は少し油断していたのかもしれない。
 それに今だって普通に話をしていただけで、別にそんな雰囲気になった訳ではなかった。

「な、何だよ、急にっ…」
 顔が妙に熱くてたまらない。
 そんな顔を月森に見られているのだと思うだけで余計に顔に熱が集まってくるのを自覚する。

「君に、触れたかった」
 見たことのない微笑みが目の前にある。
 まるでなんでもないことのように、いとも簡単にそう答えられて熱は更に上がる。

「嫌だっただろうか…」
 その表情がわずかに曇る。
 俺へと伸ばされた手が、不意に止まって戻っていくのが目に留まる。

「そんなこと聞くな…」
 嫌ではなかったけれど、だからといってなんと答えていいのかわからない。
 真っ直ぐに見つめられる視線が照れくさくて、真っ直ぐに見返すことが出来ない。

 触れる前に離れてしまったと思った手が、強い力で俺の腕を掴む。
 そのまま強く引かれ、体勢を崩したと思ったときにはその腕にしっかりと抱き締められていた。

 ほんの一瞬、唇が触れる。
 ほんの一瞬、視線が絡み合う。

 そして俺たちは、初めて恋人のキスをした。



まるで息つく間さえ与えてはもらえないような…
2009.6.9
月森君は無意識に微妙なタイミングを狙えるような気がします。
土浦君はそういうのが苦手そうなので、たぶん振り回されるんだと思います。