TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』 音楽用語のお題

emporte

「好きだ」
 俺は君の腕を掴み、そう叫んでいた。

 俺たちの仲は相変わらず悪く、いつものように些細なことで言い合っていた。
 いつもならどこかで冷静になる瞬間があるのに、その雰囲気は険悪になる一方だった。
 土浦の態度はいつも以上に頑なで、でもどこか投げやりな印象も受けていた。

 俺が言葉を発するたびにその眉間に皺が増え、黙っていれば余計に不機嫌になる。
「どうせお前は…」
 何を言ってもまるで決め付けるようにそう言われ、諦めたようなため息を落とす。

 誤解されているとわかっているのに、その誤解を解く方法がわからない。
「違う、そうじゃない」
 そう否定してみてもそれをうまく説明できず、わだかまる思いがうまく伝えられない。

 喧嘩をしたい訳じゃない、言い合いをしたい訳じゃない。
 確かに土浦と俺の考え方は全く違うかもしれないが、でも解り合えるはずだと思っている。
 だから俺は君のことを、もっと知りたいと思う。

 けれどこの想いが土浦には伝わらない。
「俺のこと、嫌いなんだろ…」
 そう言って、少し悲しそうな表情で俺のことを否定する。

 その一言に、俺は思わず土浦の腕を掴んでいた。
「だから違うと言っているだろう!」
 今ここで土浦の言葉を否定しないと後悔することになると、警鐘めいた予感が俺の心を過ぎていく。

「俺は土浦が好きなんだ」
 頭で考えるよりも先に、その言葉は俺の口をついて出ていた。



我を忘れてしてしまった告白だったけれど…
2009.5.26
我を忘れてってほどではない気もしますが。
必殺いいところ切りなので、この後の展開は想像にお任せします。