『音色のお茶会』 音楽用語のお題
monologue
人ごみの中で見つけたその姿を、俺は遠くからそっと見ていた。誰かと話をしている様子のその表情は明るく、時折その表情に笑顔が混ざる。
顔はこちらへ向けられている。けれどその表情は俺に向けられたものじゃない。
その視界の中に、遠く離れた俺が入っている訳はない。
俺ではない誰かに、君の笑顔が向けられるのが悔しい。
その笑顔を、俺だけのものに出来ないことが悔しい。
けれどもしその視界の中に俺が入っていたならば、君は俺の視界から姿を消してしまうだろう。
俺の本心は隠したままだというのに、君の笑顔を望むのは自分勝手過ぎる。
だからといって本心を告げたところで、この想いが叶うのは夢のまた夢の話だ。
俺たちは親友でも友達でもなく、ただの同級生に過ぎない。
学内コンクールがなかったら、一生、顔も名前も知らないままだっただろう。
俺の知らない君はまた、俺の知らない誰かに笑顔を向ける。
そうして俺は君に気付かれないまま、ただ一人、遠く離れた君を見つめ続ける。
それはまるで一人芝居のように…
2009.5.12
月森君の片思い。
名前が出てないですが、相手はもちろん土浦君です。
月森君の片思い。
名前が出てないですが、相手はもちろん土浦君です。