TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』  もどかしい恋のお題

また明日も

 月森とけんかした。
 そんなこと、まぁいつものことなんだが、今回はやけに長引いている。
 原因が何だったかなんて覚えていない。
 些細なことでの言い合いはいつものことだし、お互い負けず嫌いだからついむきになるし。
 それでも「言い過ぎた」とか「悪かった」とか、どちらともなくそんな言葉で終わらせていたのに。
 今回はどちらからもそんな言葉が出なくて、そのまま何日も逢っていない。
 だから口もきいてないし、もちろん電話もしてないし、メールだってしてない。
 同じ学校に通っているのに、その姿すら見ていない。
 用がない限り音楽科の校舎に足を踏み入れることはないし、わざわざ練習室に行くこともない。
 月森だって普通科の校舎に来ることはないだろうし、放課後にグラウンドへ来ることだってないだろう。
 俺たちが学校で偶然逢う機会ってホント少ないんだな。
 もしかして逢おうって思わないと、俺たちって逢えないのか?
 そんなことないよな、今までだってそれなりに逢っていたし…。
 いや、でもそれは逢えるかなって期待していたところもあるし、逢いに行ったりもしていたし…。
 これって、俺はもしかしなくても不安になっているってことか?
 このままじゃ、明日も明後日もその先も、ずっと逢えないような気がしてきた。
 また明日も、もし逢えなかったら…。
 いや、明日の朝は正門前で待ち伏せてやる。
 明日逢えばきっと、素直に謝れる気がする。
 それよりも「おはよう」って声を掛けるだけで、この気持ちは伝わるかもな。
2007.12.25
逢わなさ過ぎて仲直りのきっかけがつかめなくなった感じ。
ついでに不安にもなってみたり。
まぁでも、ケンカするほど仲がいいっていいますから。


明日会えばきっと

 土浦とけんかした。
 そんなことは、いつものことだが、今回は少し長引いている。
 原因は確か音楽のことだったが、詳しくは覚えていない。
 些細なことでよく言い合いはするし、そうなるとお互いが我を通そうとしてしまう。
 それでもいつもなら「言い過ぎた」「悪かった」と、どちらともなくそんな言葉で終わらせていたのに。
 今回はどちらからもそんな言葉が出なくて、そのまま何日も逢っていない。
 だから口もきいてないし、もちろん電話もしてないし、メールもしてない。
 同じ学校に通っているのに、その姿すら見ていない。
 用がない限り普通科の校舎に行くことはないし、部活中のグラウンドへも行くことはない。
 土浦だって音楽科の校舎に来ることはないだろうし、放課後に練習室まで来る必要もないと思う。
 俺たちが学校で偶然逢う機会は本当に少ないのだな。
 もしかすると逢おうと思わないと、俺たちは逢えないのだろうか?
 そんなこともないと思う、今までもそれなりに逢えていたはず…。
 いや、でもそれは逢えるかもしれないと期待してたところもあるし、逢いに行くこともあった…。
 これは、俺はもしかしなくても不安になってるということだろうか?
 このままでは、明日も明後日もその先も、ずっと逢えないような気がする。
 また明日も、もし逢えなかったら…。
 いや、明日の朝は正門前で待ってみようか。
 明日逢えばきっと、素直に謝れる気がする。
 それよりも「おはよう」って声を掛けるだけで、この気持ちは伝わるかもしれない。
2007.12.28
ほぼ変わらない文章で別視点…。
微妙に口調が違うだけ…。
ちゃんと二人っぽくなってるかちょっぴり不安…。


その言葉が唯一の繋がり

 「本当にムカつくヤツだな、お前って」
 それは土浦から月森に向けられた言葉。
 苦々しく眉間に皺が寄せられ、意志の強そうな瞳が月森を睨みつけている。
 「その言葉、そっくりそのまま君に返そう」
 その言葉に月森は土浦にそう返す。
 無表情にも見えて、けれどその瞳には怒りとも不機嫌ともとれる強さを併せ持っている。
 言い合いは日常茶飯事で、よくもまぁ飽きないものだと周りもあきれるほどの犬猿の仲の二人。
 目が合ったとたん、火花が飛ぶのではないかとも思われている。
 普段、めったに会わない所為か、会ったときの言い合いは半端じゃない。
 何を言っても冷静に対応する月森に土浦の語気は自然と強くなる。
 土浦が感情的になればなるほど月森は淡々とした言葉を返す。
 その繰り返しでいつも言い合いに結論は出ない。
 イライラする。
 そう思うのはお互い様で、会う度に、言い合う度にそう思う。
 相手の態度、言葉、考え方、その何もかもが理解も同意もできない。
 でもそれがイライラの原因の全てではないようにも思えてしまう。
 仲良く話をしたい訳でももちろんない。そんなことは考えられない。
 それでは、このイライラする気持ちはなんだろうか。
 嫌いならば口をきかなければいいのに。
 そう思って、でも嫌いではないのだと気付く。
 だからどんなに言い合っても『嫌い』という言葉が口から出ることがない。
 相手から『嫌い』という言葉を聞いたこともない。
 もしも『嫌い』と言ったら。『嫌い』と言われたら。
 こんな風に言い合うことは、決してなくなるような気がする。
 その言葉を言わないことが、今の二人を繋いでいるのかもしれないと、一瞬そう考えた。
 「お前、本当にムカつく」
 「君も相当ムカつくと思うが」
 それならば、本当に言いたくなるまで、逆に言われるまで、このまま言い合う関係を続けていこう。
2008.1.4
自覚すらしていない二人。
嫌いにも好きにもなれない状態。
三人称ですが最後はどちら目線で読んでいただいても。


息苦しくて声も出ない

 「俺のこと嫌いなんだろう」
 売り言葉に買い言葉で出た台詞。
 そう言って、変に胸が痛くなった。
 どうしても気が合わなかったし、相容れなかった。
 でも嫌いではなく、逆に嫌われていると思っていた。
 だから、言ってから後悔した。
 そんな風に気持ちを確かめたくはなかった。
 もしここで、嫌いだと言われたら…。
 「・・・・・・・」
 無言は肯定ということか。
 やっぱりそうか、と思う。
 けれど、なぜか声に出して言うことが出来ない。
 苦しくて、切なくて、この気持ちを認めたくなくて。
 その言葉が、声が出ない。



 「俺のこと嫌いなんだろう」
 売り言葉に買い言葉で出た台詞。
 そう言われて、妙に胸が痛くなった。
 どうしても気が合わなかったし、相容れなかった。
 でも嫌いではなく、逆に嫌われていると思っていた。
 だから、言われて少し驚いた。
 そんな風に思われているとわからなかった。
 でもここで、どう返事をするべきだろうか。
 「・・・・・・・」
 無言では肯定ととられてしまう。
 そんなことはない、と心では叫んでいる。
 けれど、なぜか声に出して言うことが出来ない。
 苦しくて、切なくて、この気持ちを認めたくなくて。
 その言葉が、声が出ない。
2008.1.5
続きというわけではないですが。
言った側と言われた側で2つ。
どっちがどっちてで読んでいただいても。


こんな時ですら浮かぶ顔

 「違う。まったく何度も言わせないでくれないか」
 そう言った月森は少し不機嫌そうだった。
 「じゃあ、具体的に言ってくれよ、違う、だけじゃなくてさ」
 そう答えた土浦も少し不機嫌そうだった。
 「言わないとわからないのか」
 冷たいとすら思わせる瞳で月森はピアノの前に座った土浦の方を向いた。
 「当たり前だろう」
 土浦は怒り半分、呆れ半分でヴァイオリンを構えたままの月森を見上げた。
 「……。そこは少し抑えて弾いてくれないか」
 少し考えるような間のあと、月森は静かにそう言った。
 「抑えるって、それだけだったのか」
 小さくつぶやきながら、土浦は楽譜に書き込んでいく。
 『どうして音楽に関してはこう分かり合えないのだろうか』
 月森は口に出さず、心の中でそう思った。
 『何で音楽の話になると言い合いみたいになるんだろうな』
 土浦も口に出さず、心の中でそう思った。
 元々、音楽に対してはお互い正反対の意見を持っていたけれど、二人の音色は不思議と綺麗に合わさった。
 その音に惹かれ、それを奏でる本人にも惹かれた。
 だから好きになって、唯一、気の許せる相手にもなって、今は所謂、恋人同士になった。
 それでも音楽に対する解釈などは相変わらずぶつかってしまうことが多い。
 音楽のことでなければお互いのことはわかる気がする。
 『なかなか素直に言ってくれない気持ちも、その表情でわかるのに』
 そう思いながら、月森は昨日の夜を思い出していた。
 『無表情に見えて、実は表情豊かだし、気持ちは読めるんだよな』
 真っ直ぐ見つめられている視線が、土浦に昨日の夜を思い出させた。
 「「あ…」」
 思わず、二人の口から小さな声が漏れた。
 そして、二人ともなんとなく赤い顔をしている。
 「もう一度、合わせてみようか」
 誤魔化すように月森はヴァイオリンを構え直した。
 「そうだな、さっきのところは気を付けるから」
 土浦もあわてて鍵盤に視線を戻した。
 『こんな時にあの表情が浮かぶのは少し困るかもしれない…』
 そして、お互い心の中でそう思った。
2008.1.5
どんな関係でも言い合いは耐えない二人。
どんな表情を思い出したのかは秘密。
というか、ご想像にお任せします^^


ケンカ&言い合いな5話にしました。
認め合っているからこそなのか譲れないだけなのか…。
言い合いをしている二人というシチュエーションは好きです^^


もどかしい恋のお題