『音色のお茶会』 もどかしい恋のお題
今、何考えてる?
真っ直ぐに向けられた視線が、俺を見ていることは確かだ。ただそれが、どういった感情なのか、その表情からは読むことが出来ない。
普通に考えれば、いいように思われてはいないとは思うけど。
でも、あまりに真っ直ぐ過ぎて、もしかしたら、なんて考えてしまう。
言い合ってばかりのあいつのことを、嫌なやつ、と思わなくなったのはいつからだろう。
俺はいつの間にかあいつのヴァイオリンに、いや、あいつ自身に惹かれていた。
言葉にすれば、きっと好きってことなのだと思う。
打ち消してみても、否定しても、この想いは変わらなかった。
だけどあいつとは相変わらずで、会えば言い合いか、今みたいに無言の時間が続くだけ。
いい加減、こんな状態からは抜け出したいぜ。
一か八かの玉砕覚悟で、俺から言ってみるのも悪くない。
踏み出そうとするこの一歩は、どっちに転ぶか。
「なぁ、月森。今、何考えてる?…俺はお前のこと、考えてるよ」
2007.12.25
片思い中の、はじめの一歩。
いい方に転びますように。
めずらしく土浦君を素直にさせてみました。
片思い中の、はじめの一歩。
いい方に転びますように。
めずらしく土浦君を素直にさせてみました。
表情には出てないけど
“好き”なんて言葉に出して言えない。“好き”なんて表情も向けられない。
けど、お前のことは好きだから。
二人っきりの帰り道、そっと指を絡めてみた。
「どうした?」
驚いた風に、不思議そうに聞いてきた月森に、
「なんでもねぇよ」
と、さらに絡ませてゆく。
「そうか」
返された言葉はそっけなかったけれど。
絡めた指をそっと握られて。
その表情は“好き”って言われているようで。
俺は素直じゃないよな、なんて思いながら。
明後日の方を向いて、小さく「好き」ってつぶやいてみた。
2007.12.12
やっぱりいつもの素直じゃない土浦君。
でもきっと顔に出てると思います。
もしかしてちょっぴりツンデレな感じ?
やっぱりいつもの素直じゃない土浦君。
でもきっと顔に出てると思います。
もしかしてちょっぴりツンデレな感じ?
たとえ気のせいでも
ふとした瞬間に、気付いてしまったことがある。叶うことはないであろう、月森への想い。
きっとコンクールがなければ出逢うこともなかった。
言葉を交わすことすらなかったかもしれない。
それなのに俺たちは出逢い、そして俺はこの気持ちに気付いてしまった。
他人に興味のなさそうな物言い、そのくせ、的を得た非のない指摘。
音楽のことしか、ヴァイオリンのことしか頭にないような言動。
最初はそれに対する反発心で何かと文句を言っていた。
けれど今は、ただ話すきっかけがほしくて、わざとけんかを吹っかける。
俺の存在を認めさせたくて、気にかけてほしくて、なんて、俺はガキみたいなことをしている…。
そんな俺に対して月森は、相変わらずな態度を返す。
反応が返ってくるうちはまだいいのかもな。きっと、話したくないほどには嫌われていない。
危うい、綱渡り状態ってところか。
でもまだ大丈夫。あいつの中で、俺はちゃんと存在している。はず。
それがたとえ気のせいでも、あやふやな関係でも、今の俺にはそれ以上のことは望めない。
いっそのこと、嫌われて、口もきいてくれなくなればすっきりするのかもしれない。
そんな風に思いながら、そうはなりたくないと思う自分もいる。
先には進めない。なかったことにも出来ない。気付かない振りも、出来ない。
気付かないでいれば、何も変わらないはずだった。
でも、気付かなかった頃には、もう、戻れない。
2007.12.25
土浦君、片思い中。
いろいろな意味で危うそうな感じがします。
綱渡りというか、薄皮一枚というか…。
土浦君、片思い中。
いろいろな意味で危うそうな感じがします。
綱渡りというか、薄皮一枚というか…。
そう思ってくれていい
月森をからかうつもりだったんだ。最近、やけにあいつが俺に話しかけてくるから。
音楽のことから始まって、他愛のない会話。
それは言い合いばかりを繰り返していた俺たちには不似合いで。
なんでかなんてわからなかったけど、なんだか月森が必死になっているように思えて。
いつも澄ました顔をしている月森だから、違う月森を見られることが楽しくて。
だから俺は、
「俺のこと、好きなわけ?」
月森をからかうつもりだったんだ。
「そう思ってくれていい」
それなのに、真っ直ぐと真剣に返された言葉。
「冗談、だろ?」
その言葉に返事はなくて、代わりに少し淋しそうな表情の月森が目に入って。
胸がぎゅっと締め付けられた気がした。
『そう思ってくれていい』
月森の言葉が、繰り返えされる。
「俺はっ…」
言いかけて、言葉に詰まる。
俺は、月森のこと、どう思っている?
俺も、月森のこと・・・?
瞬間、俺は自分の気持ちに気付かされてしまった。
2007.12.25
思わぬところで自覚した瞬間。
タイトル的には月森君視点かなと思いつつ。
逆を狙ってみましたよ。
思わぬところで自覚した瞬間。
タイトル的には月森君視点かなと思いつつ。
逆を狙ってみましたよ。
簡単なその言葉でさえ *
頭のてっぺんからつま先まで。触れられていないところなんてないくらいに。
「…っぁ、んっ」
月森で身体中が満たされる。
「あっ、つき、もりぃ…」
それでもまだ足りなくて、でも言葉に出して言えなくて。
もっと、と、目で訴える。
「梁太郎…」
耳元で呼ばれる名前でさえ。
「どうしてほしい?」
告げられる、その言葉でさえ。
まるで媚薬のように身体中に染み渡るのに。
「っふぅ、んぁ、つ、き…」
変な理性が邪魔をする。
「梁太郎」
もう一度呼ばれたその名前に、その吐息に。
「あぁ、やぁっ」
無意識に首を振る。心が悲鳴を上げる。
「梁…」
抱え込むように抱きしめられて、小さな口付けが何度も降りてきて。
ゆっくりと、身体も心も、溶かされていく。
「梁太郎、愛している…」
「…れ、ん…」
しがみつくように、背中に腕を回して。
その耳元に、小さな声で。
「蓮…好き、だよ…」
一度、口に出してしまえば、あとは想いがあふれるだけ。
2007.12.26
最後は微裏。で、無駄に長いような…。
簡単な言葉でさえ「言えない」
簡単な言葉でさえ「煽られる」って感じで。
最後は微裏。で、無駄に長いような…。
簡単な言葉でさえ「言えない」
簡単な言葉でさえ「煽られる」って感じで。
土浦君視点でまとめてみました。
甘いのから切ないのから微裏まで。
でも最初は全部切ない話を書く予定だったのですよ。
書き始めたら違う話になってました(苦笑)なので最後は開き直り?
甘いのから切ないのから微裏まで。
でも最初は全部切ない話を書く予定だったのですよ。
書き始めたら違う話になってました(苦笑)なので最後は開き直り?
もどかしい恋のお題