『音色のお茶会』 もどかしい恋のお題
かすめた指先
散々言い合って、でもお互いに折れることも納得することも出来なくて。考えの読めない表情と不機嫌な表情でため息をつく。
本当はこんな風に言い合いたいわけではないのに。
相手のことを認めていないわけでもないのに。
なのにどうしてもぶつかってしまう考え方の違い。
「もうやめよう」
言い合いに終止符を打つ言葉が発せられれば
「そうだな」
その言葉には素直にうなずく。
これ以上話してもきっと平行線だから。
言い合わずに、普通の会話をしてみたいと思う。
友達とか親友とか、そんな関係にはなれそうにもないけれど。
いつか相手に受け入れてもらえる日が来るだろうか。
例えば、いいライバルにならなれるのではないだろうか。
いや、本当はそんな関係ではなくてもっと…。
でも今は言い合いを止めてしまえば一緒にいる理由がなくて。
「じゃあ、な」
その場を去るための言葉が紡がれる。
「あぁ、また」
それでもそのまま別れてしまうのは少し淋しい気がして。
すれ違い様、絡めるように指先を掠めていく。
本当はただ、もう少し一緒にいたいのだと。
そんな気持ちは伝わるだろうか。
2007.12.11
まだくっついてないふたり。
どちらの目線で読んでいただいても。
どちらがどちらの台詞でも、行動でも。
まだくっついてないふたり。
どちらの目線で読んでいただいても。
どちらがどちらの台詞でも、行動でも。
手を繋ぐかわりに
下校時間、偶然逢えた恋人に「一緒に帰らないか」と誘ってみる。学科が違い、お互い練習や部活があるため学校ではなかなか逢えない。
連絡を取り合ってたまには一緒に帰ったりもしているけれど、偶然は嬉しい。
「ああ。…っとそうだ、楽器屋に寄ってもいいか」
偶然に叶った一緒の帰り道が、少し遠回りな帰り道になる。
付かず離れずの距離で並んで歩く会話は、自然と音楽の話になる。
今でも意見の相違があることは否めないが、それも音楽に対する姿勢だと思えば有意義なことだ。
こんな風に思えるようになったのも、君と出逢えたおかげだ。
音楽という共通点がなければ出逢うことすらなかったかもしれない。
だからこそ俺たちにとって音楽は特別な意味を持っている。
君の奏でる音と俺の奏でる音が重なり、そして俺にとって君はかけがえのない存在になった。
音楽がきっかけでいがみ合い、そしてその音楽がきっかけで二人の距離は縮まった。
だからといって、それが唯一の繋がりとは思っていないけれど。
「君とこんな風に、音楽の話が出来る日が来るとは思わなかった」
今、手を繋いで歩けない代わりに、君が紡ぐ音楽の言葉を心で握り締めよう。
2007.12.12
甘い…かな?
仲良さげに二人で寄り道。
こっそり指が触れていたらいいなぁ。
甘い…かな?
仲良さげに二人で寄り道。
こっそり指が触れていたらいいなぁ。
この場に留まる口実
うららかな日差しに誘われて足を向けた放課後の森の広場。少し風が強いせいか、天気の割には人が少ない。
特に用事があってきた訳でもなく、とりあえずベンチに座る。
そういえば新しい楽譜を買ったんだった。
なんとなく、急に弾いてみたくなって買った楽譜がカバンに入っている。
それは、やっぱりあいつの影響だろうか。
パラパラと楽譜をめくりながら、思い出すのはヴァイオリンの音色。
そしてそれを弾く…。
「月森…」
人の気配を感じ楽譜から顔を上げると、目の前に思い浮かべていた本人が立っていた。
一瞬、持っていた楽譜を落としそうになって慌てて持ち直す。
「君もこの曲を?」
そんな俺の動きで、月森の視線は楽譜へと移動していた。
「あ、あぁ」
なんとなく、見られたくない人に一番に見られてしまった気がした。
月森が弾いているのを聴いたから、俺はこの曲を弾いてみたいと思ってしまったんだ。
「お前はどう弾く?」
俺の言葉に、月森の表情が少し険しいものに変わる。
「難しく考えるなよ。ただ、聞いてみたかっただけだ」
月森のその表情に、しまったな、と思う。
本当はただ、話すきっかけを作りたくてとっさに言った一言だったのだ。
音楽の話になると、どうして俺たちは普通に会話が出来ないのだろうか。
「君の参考にはならないと思うが…」
それでも立ち去る気配がなさそうなので「座れば」と少し右にずれてみる。
一瞬、考えるようなそぶりを見せてから、月森は隣に座った。
ひとつの楽譜を挟み、俺たちは並んで話した。
結局、いつもと変わらない言い合いになってしまったけれど、今はそれでもいいかな、と思う。
お前と同じようには弾けないと思うし、弾く必要もないけれど。
いつか一緒に弾ける日がきたら、お前のヴァイオリンに合わせたピアノを弾いてやろうと思った。
2007.12.14
留まるというより、留める口実。
まだ土浦君は片思い中。
でも前向きなので切なくないです。
留まるというより、留める口実。
まだ土浦君は片思い中。
でも前向きなので切なくないです。
君の隣に腰掛けて
練習に集中できなくて息抜きに訪れた放課後の森の広場。いつもなら楽器の音色であふれている広場が、今は風の音しか聞こえない。
息抜きにはちょうどいい。
特に目的もなく歩いていると土浦がベンチに座って楽譜を見ていた。
真剣なその表情に惹かれるものがあって、傍まで歩み寄った。
「月森…」
真剣だった表情は、少し驚いたようなものに変わった。
見ていた楽譜が気になって少し視線を下げると、見覚えのある音符の並びに頭の中で曲が流れ出す。
「君もこの曲を?」
土浦のピアノを聴いていたら急にこの曲が思い浮かび、最近よく弾いている。
けれど土浦のレパートリーにあるとは思っていなかった。
「あ、あぁ」
一瞬、土浦の視線が楽譜に戻った。
君のピアノで弾くと、この曲はどんな旋律になるのだろうか。
「お前はどう弾く?」
挑戦的とも取れる瞳でちょうど逆のことを聞かれ、見透かされているような気持ちになる。
「難しく考えるなよ。ただ、聞いてみたかっただけだ」
その言葉はそれで、淋しいような気持ちにさせた。
悪気も他意もないのだと、そう思いながらもやっぱり土浦の言葉が心に引っかかる。
それは、俺がこの曲を土浦のピアノに合わせてみたいと思って弾いていたからだ。
それに対し、土浦はほんの興味程度なのだとわかってしまった。
「君の参考にはならないと思うが…」
それでも、土浦が奏でるこの曲を聴いてみたいと思う俺がいる。
「座れば」
そういった土浦は、少しずれて俺が座るスペースを作った。
この言葉は、どう受け取ったらいいのだろうか。
土浦は本当に俺の意見を聞きたいのだろうか。でも、土浦の意見を聞くことは悪くない。
いつか、もし一緒に弾くことが出来たら、その時は君のピアノに合わせた演奏をするのもいいかもしれない。
君の隣に座り、ひとつの曲の話をする。
いつか、この曲を、たくさんの曲を、一緒に弾くことが出来ることを心で願いながら。
2007.12.15
お題でも逆視点をやってしまいました。
実は月森君も片思い中。
いつか一緒に弾けるといいですね。
お題でも逆視点をやってしまいました。
実は月森君も片思い中。
いつか一緒に弾けるといいですね。
何度も目が合う日
今日はこれで何度目だろうか。目が合って、そして自然にそらし、そらされる視線。さっきから、そんなことの繰り返し。
俺の視界に入れば振り返って目が合うし、俺が視線を感じて振り向けばやっぱり目が合う。
そういえば同時に顔を上げて目が合ったこともあった。
別に近くにいるわけでもない、用事があるわけでもない。
じっと見ているわけでもない、探しているわけでもない。
だから目が合ってもお互い自然にそらす。
別に話すことはないし、話せばまた言い合いになるだけだ。
でも、次に目が合ったら、そらさないでいてみようか。
それともそらしてすぐに、もう一度、見てみようか。
そうしたら、何かわかるだろうか。何か、変わるだろうか。
何度も目が合う日。もう一度くらい、きっと目が合うだろう。
だから、もし目が合ったら。
そして目が合ったとき、自分のこの気持ちに、俺は気付いてしまった。
2007.12.16
自覚した瞬間。
どちらの目線で読んでいただいても。
まぁ、お互い様のようですが。
自覚した瞬間。
どちらの目線で読んでいただいても。
まぁ、お互い様のようですが。
触れられる距離にいるのに触れられない…。
といった感じの話でまとめてみました。
でも、もどかしい感じではないかもですね^^;
といった感じの話でまとめてみました。
でも、もどかしい感じではないかもですね^^;
もどかしい恋のお題