『音色のお茶会』
密夜(R18)
その熱さを受け止めるように、俺は身体を後ろに倒した。月森は覆い被さるように、それを追ってくる。離れないように、そう思っていた唇は一瞬離れ、けれど息を吸う間ももったいないように思えてお互いが引き寄せるようにもう一度重なった。
触れる舌先が、とても熱い。その熱さに、頭がくらくらする。
お互いの口腔内を舌が行き交い、絡み合い、深く、深く繋がっていく。
「ぅん…」
漏れ聞こえた自分の声にすら、俺は煽られ、ふるりと、身体が揺れた。
深い口付けはそのままに、うっすら目を開けると月森と目が合った。
普段は決して見せることのない瞳で俺を見つめている。その瞳に映る俺も、きっと同じ瞳をしている。
情欲に濡れた二人の視線が絡み合ったままの口付けはやけにリアルで、堪らず俺は目をつぶった。
瞬間、月森の冷たい手が俺の肌を滑っていく。それだけで俺の背中に快感が走った。
肌と肌が直に触れ、その熱さに更に熱が上がる。
「んあぁ…」
耐え切れず首を振れば唇が離れ、上げるつもりのなかった声が部屋に響いた。
撫で上げるような手の動きが、今度は首筋から徐々に下りていき、その手を追うように唇が触れる。
チクリとした痛みが、肌から伝わってくる。
「土浦…」
「つ、あっ」
呼ばれたその声に返そうとした言葉は、胸に感じた月森の冷たい手と唇の熱さで喉の奥で違う音に変わってしまう。
冷たさと熱さの両極端の感覚に、その温度に、俺の身体は跳ね、追い上げられていく。
俺の弱いところばかりを狙ったような月森の唇に、昨日の夜の感覚が残った身体はあっけなく反応を返し、その先を求めるように焦れていく。
「月、森…」
無意識に伸ばした手はさらりとした月森の髪に触れた。その髪が指の間を滑る感覚さえ、思ってもみなかった気持ちにさせる。それが居た堪れなくて所在なげに宙をかいた手は月森の手に捕らわれ、そのままシーツに縫いとめられた。
「土浦…」
少し低めの声で呼ばれてゆっくり目を開ければ、目の前に真剣な顔をした月森の顔があった。
その瞳が、真っ直ぐに俺をみつめている。その瞳に、月森の想いがあふれている。
「ぁ…月森…」
空いた手で月森を引き寄せて口付け、俺は軽く片膝を立てた。
今すぐ、月森を感じたくて、月森にも俺を感じて欲しい。
月森の手が下肢へと下り、そこに触れたのを感じ、俺はゆっくりと息を吐いた。
くすぐるように触れられる指の動きに、ビクリと腰が揺れたその瞬間、身の内に月森の指を感じた。
「ん、ふぅ…んー」
その指が動き、増やされる度に抑えきれない声が漏れた。
握られた手に縋り、引き寄せた肩口に縋り、物足りなくて切なくなる。
「つき…っりぃ…あっ――――っ」
その先を促すように名前を呼んだすぐ後、頭の中が真っ白になるような刺激で快楽が全身を走った。
その一点を掠められただけで、肩が、腰が、身体が意思に関係なく跳ね、声が止まらなくなる。
「あっぁ、あ、んっ、」
快楽を覚えている身体が、その先を期待するかのように柔らかく解けていく。
「土浦…」
耳元でささやかれた名前に意識を向けると、一瞬の喪失感の後、それを凌駕する熱に満たされた。
「っん――――――っ、はぁ…」
「っ…」
最初の衝撃をやり過ごすように息を吐けば、逆に息をつめたような月森の声が聞こえた。
目を開ければ、少し眉根を寄せた月森が見えた。不機嫌な時にみせるそれとは違う、その快楽に浮かされたような表情に煽られ、俺は身の内の月森を締め付けてしまう。
「んっ」
もう一度聞こえた月森の声に、その質量が増したと思う間もなく動き始められて、更なる高みへと追い上げられる。
「あぁ…んぁ、っん…あ…つぃ…」
熱い、と思った。いつもより、さっきより、月森が、俺が、何もかもが熱かった。
「土浦の中も、熱い…」
吐息と一緒に吹き込まれるようなその言葉でさえ熱くて、本当に溶けてしまうような気がした。
その全身を包み込むような熱さは心地好くて、溶けてしまいそうな感覚や意識を繋ぎとめておくのがやっとだった。
朝までの月森のことを知ってしまったから、意識を飛ばしてしまうことは避けたかった。朝まで、離したくないと思った。
「あぁ、あっ、あぁん」
そんな俺の気持ちなんて伝わらないかのように、月森は俺の何もかもを奪っていく。
噛み付くようなキスも、触れられた自身も、聞こえる月森の声も、もう何も考えられなくて、ただただ熱くて、溶けて、解かされていく。
「土、浦…、っ…」
「月、もっ…りぃ、あぁ、もぅ、ふぁ…ん、あっぁ――――」
月森の熱が俺の中に注ぎ込まれたとき、俺もその熱を開放していた。
「はぁ…」
月森から、ため息のような吐息が漏れた。その声が、飛びそうになった俺の意識をなんとか繋ぎとめてくれた。
そっと抱え込むように抱きしめられ、俺は半分朦朧としながらもその背に腕を回した。
触れるだけのキスが、目元に、頬に、唇に落ちてくる。
「つ、き…」
しゃべろうと思って、声が掠れてうまく出なかった。
俺の短い髪をなでるように触れてきた月森の手は、いつもより暖かく感じた。
「君はいつも暖かいな」
焦点が合わなくてうまく見えなかったが、優しく微笑んでいるのがわかる。
「それ、なら…」
掠れた声のまま、俺は更に引き寄せるように腕に力を込めた。
「朝まで離すなよ…」
お前が離れると、俺が寒いから。そんなことに、初めて気付いてしまったから。
その腕の中は、触れる身体は、心地好く暖かかった。
俺はぬくもりに包まれながら、意識を手放した。
密夜
2008.1.12
コルダ話8.5作目。
こっそり書いてみた続きで裏です。
前作では書けなかったことも含めて、話はちゃんと完結したかなぁと思います。
裏というほどでもない気もしますが、表に置くのもためらわれたのでこんな形にしてみました。
そして実はこっそりタイトルも変わってます。ぱっと見、わからないかもなのでこっそり。
閲覧後の文句、苦情はなしでお願いいたします(ぺこりぺこり)
お気に入り登録とかもなるべくしないでくださいね。オンラインブックマークとかは絶対ダメですよ。
コルダ話8.5作目。
こっそり書いてみた続きで裏です。
前作では書けなかったことも含めて、話はちゃんと完結したかなぁと思います。
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