TeaParty ~紅茶のお茶会~

『音色のお茶会』

嵐の宴

はらり ひらり 吹きすさぶ
はらり ひらり 小夜嵐



 二人きりの部屋はとても静かでやけに空気が張り詰めている。
 時折微かに音を立てて揺れる窓ガラスが嵐の訪れを知らせる。

 遠距離恋愛など続く訳がないと言われたときには、それを否定した自分がいた。
 逢えない時間と距離が長くなって、今はそれを以前のように否定できない。

 離れていれば逢いたいと思い、逢えば離れたくないと思う。
 けれど現実には簡単には会えず、結局は離れなければいけないことが当たり前になっている。

 慣らされて、心が痛みを感じない。
 それは、心変わりなのだろうか。

 久し振りに逢えばとにかく一番にそのぬくもりを確かめたいと思う。
 けれど離れている時間が長過ぎて、本当に求めていたものが何かわからなくなる。

 傍に居るのに、触れているのに、心だけがどこか遠くにあるように思えてならない。
 好きなのに、愛しているのに、その想いが少しずつ形を変え始めている。

 そんな俺の変化に、きっと土浦も気付いている。
 けれど土浦の本心が俺にはわからない。

 こんな風に変わってしまった俺を、どう思っているのだろうか。
 時折見せる何かを諦めたような表情には、どんな意味があるのだろうか。

 自分の気持ちはわかっているのに、それを持ち続けていく自信が今の俺にはない。
 それはまるで嵐のように、俺の心を容赦なくかき乱す。

 この嵐に逆らって外に出ることを望むのか、この嵐に巻き込まれて流されていくことを望むのか。
 それともこの嵐が通り過ぎるのを、ただじっと待つことを望むのか。

 二人きりの部屋に強くなった風が揺らす窓ガラスの音だけが響き渡る。
 嵐はもう、すぐそこまで近付いてきている。


はらり ひらり 吹き荒れる
はらり ひらり 浮世の風




嵐の宴
2009.4.30
コルダ話40作目。
時間と距離に比例して離れそうな心。
繋ぎとめる自信のない月森の心境。